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「ふぅっ、お腹いっぱい。ごちそうさまでした」
あまりの空腹と美味しさにいつも以上に食べた祐羽は、ソファに寄り掛かった。
たぬき顔負けのぽっこりお腹が苦しいからだ。
それは中瀬も同様で、遠慮するなと言われ開き直って、それはもう驚く程に口へ詰め込んでいた。
外崎はというと、こんな時でも少食なのかそれなりに食べて満足したらしく、相変わらず紫藤の世話を焼いていた。
ソファに座っていた全員が食べ終わると、テーブルから食器が下げられ、次に飲み物と菓子が運ばれてきた。
「会長」
九条と紫藤の前にコーヒーがセットされ始めた時だった。
控えていたはずの眞山が少し居ないと思えば戻ってきて、ソッと小声で耳打ちしてきたのは。
何だろうかと視線をやると紫藤と視線を交わす。
「タイミング悪いのぉ」
溜め息をついた紫藤が外崎を見た。
「律。これから上と大事な話があるけぇ、出る。お前はこのふたりと一緒に此処におれ」
「えっ?私も、」
「駄目じゃ。お前は疲れとろぉが。暫くは仕事はさせん。休憩じゃ」
「そんなっ!」
「律」
「…はい」
厳しい目で制されてシュンとする外崎から視線を外し中瀬を探すと、既に他の仲間と共に眞山の元へと駆け寄っていた。
中瀬も旭狼会の組員なので当然なのだが、そこでも外崎同様、眞山から同行を断られていた。
「お前も心身共に辛いだろう。ゆっくり待ってろ。これは命令だ」
命令と言われてしまえば逆らうことなど出来はせず、こちらもシュンと辛そうな顔を見せていた。
そして祐羽が隣の九条を見上げると「直ぐに戻る」と安心させる様に頬をひと撫でして立ち上がった。
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