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九条、紫藤が出掛けて行くのを三人が慌てて見送りに出る。
しかし、たくさんの組員の背中が邪魔をして見送れないまま、眞山を含めた三人は組員を伴ってドアの向こうへとそのまま消えていった。
なんとも心細い思いを抱いている三人に、残った組員達が室内へ戻るようにと促す。
「さぁ、お三人共どうか戻ってください」
「戻られるのは夜になりますんで、それまで三人さんでゆっくり休んでください」
大きな男達にさぁさぁと言われてしまえば、戻るしかない。
実際にここに立っていても仕方ないのは事実だ。
ソファに座り直した三人を十人ほどのそれぞれの組員が取り囲む。
「もうっ、落ち着かないから出てくれてていいよ?」
あまりの圧迫感に外崎が言うと、そんなことは出来ないと首を振られる。
「外崎さんのお気持ちは分かりますが、命令ですんで」と言われてしまう。
拉致監禁に酷い扱いを受けた三人を心配してくれた結果らしい。
気持ちは嬉しいが、さすがに大袈裟だと思う。
「そういえば、柳さんや白田さん達が今日は居ないですね」
「あれっ、水谷達は?」
どうやら外崎の方もあの日に居たメンバーが見当たらないらしい。
疑問に訊ねてみると、組員達は「休んでます」とだけ言った。
「そう。私達と同じくらい大変だったもんね。怪我とか大丈夫だったかな?」
心配そうに眉根を寄せて近くの組員を見上げると、一瞬の間を置いて頷く。
「はい。全然大丈夫ですよ。今日は向こうグループは別件で出てるので」
その言葉に外崎はじめ、中瀬と祐羽もホッと胸を撫で下ろした。
「しっかり休んでほしいな」
外崎が優しい顔でしんみり呟くと、中瀬も頷く。
「戦ってくれたもんな…」
「 そうですよね。柳さん達も疲れてますよね。しっかり休んで、体調整えてほしいです」
中瀬の言葉に祐羽が頷く姿を組員達は本当のことは言わず、黙って見守っていた。
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