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今回拐われたのが部下ならば救出になど向かわない。
敵対した相手を壊滅させれば問題は終わり。
万が一、部下に何かあったとしても仕方ない、運が悪かったと思うだけだ。
部下もそれは重々承知で九条の元へついているのだから。
しかし、拐われたのが祐羽となれば話は別だ。
黒幕が居るのは確実だが、今の状況では全く検討もつかない。
敵対しているのは、何も別勢力だけに限ったことはないのだから。
身内に居る可能性もある。
今日の味方が明日は敵になっていることも十分有り得るのだから、気を抜くことは出来ない。
「お前だけは裏切ってくれるなよ」
突然、紫藤に思っていたことを言われてしまう。
それに九条は目で答えると、祐羽達の待つホテルへと戻って行った。
◇◇◇◇◇
夏休みともなれば、どこも観光地は人で溢れており、自動的にいつもより道路も混んでいるということだ。
九条達がホテルへ戻ったのは既に夜だった。
部屋の前に居た見張りの男達は「お疲れ様です」と頭を下げた。
開けられたドアから入ると、これでもかという人数が護衛として待機していた。
てっきり祐羽が迎えに出てくるかと思っていただけに拍子抜けし、残念に感じながら部屋へと入る。
そこには空のソファがあるだけで、祐羽もお着きの中瀬、そして留守番の外崎も居なかった。
「おいっ、誰もおらんじゃねぇか。どないしとんなアイツらは」
「それがお疲れの様で、夕方にお腹を空かせて出て来られたので急遽ルームサービスを頼みました。それから、また眠いと言われて…」
「それで寝とんのか?」
紫藤の言葉に部下が頷いた。
「まっ、そりゃそうか。仕方ねぇな…」
紫藤がそう呟き寝室へと向かい、九条と眞山が続いた。
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