771 / 1012

10

今回拐われたのが部下ならば救出になど向かわない。 敵対した相手を壊滅させれば問題は終わり。 万が一、部下に何かあったとしても仕方ない、運が悪かったと思うだけだ。 部下もそれは重々承知で九条の元へついているのだから。 しかし、拐われたのが祐羽となれば話は別だ。 黒幕が居るのは確実だが、今の状況では全く検討もつかない。 敵対しているのは、何も別勢力だけに限ったことはないのだから。 身内に居る可能性もある。 今日の味方が明日は敵になっていることも十分有り得るのだから、気を抜くことは出来ない。 「お前だけは裏切ってくれるなよ」 突然、紫藤に思っていたことを言われてしまう。 それに九条は目で答えると、祐羽達の待つホテルへと戻って行った。 ◇◇◇◇◇ 夏休みともなれば、どこも観光地は人で溢れており、自動的にいつもより道路も混んでいるということだ。 九条達がホテルへ戻ったのは既に夜だった。 部屋の前に居た見張りの男達は「お疲れ様です」と頭を下げた。 開けられたドアから入ると、これでもかという人数が護衛として待機していた。 てっきり祐羽が迎えに出てくるかと思っていただけに拍子抜けし、残念に感じながら部屋へと入る。 そこには空のソファがあるだけで、祐羽もお着きの中瀬、そして留守番の外崎も居なかった。 「おいっ、誰もおらんじゃねぇか。どないしとんなアイツらは」 「それがお疲れの様で、夕方にお腹を空かせて出て来られたので急遽ルームサービスを頼みました。それから、また眠いと言われて…」 「それで寝とんのか?」 紫藤の言葉に部下が頷いた。 「まっ、そりゃそうか。仕方ねぇな…」 紫藤がそう呟き寝室へと向かい、九条と眞山が続いた。

ともだちにシェアしよう!