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ドアの向こうでは組員が出て行く気配があり、漸く静かにふたりきりになる。
九条はベッドですやすやと眠る恋人の隣に腰を下ろした。
余程疲れているのだろう。
祐羽は一向に目覚める様子はなく、九条はそのサラサラの髪に手を伸ばした。
優しく撫でつつ顔を寄せ「祐羽。おい」と声を掛けるが、やはり可愛い顔をして眠ったままだ。
じっと顔を見つめ、それからキスを落とす。
小さな唇を堪能しようとするが、眠りを邪魔されて祐羽が嫌々と顔を背けて、それからコロンと反対へと逃げてしまった。
その背中を見て小さく笑った九条は、自分も疲れを取る為に浴室へと向かうのだった。
◇◇◇◇◇
翌朝。
たっぷりと眠った祐羽は、気分よく目覚めた。
隣には九条が眠っており、嬉しくなる。
昨日の朝は、九条が居なくて心細かっただけに今朝は幸せな気持ちでいっぱいだ。
それにしても、九条さんいつの間に帰って来てたんだろう?
起こしてくれたら良かったのに。
中瀬や外崎と一緒に過ごしたので、寂しくは無かったが、やはり九条の存在はまた違う枠にある特別なものだ。
どれだけ九条に心を依存させてしまっているのか、自分でも怖いくらいだ。
先日の恐怖体験で心に傷を負ったが、それでも今平気で安心していられるのは九条のお陰なのだ。
口元をムフフとさせ九条にピッとくっついてみれば「漸く目覚めたか」と掠れたゾワゾワと耳にくる声が頭に落ちてきた。
「九条さん!おはようございます」
ビックリして顔を上げれば、間近に九条の顔。
なんだか久し振りに思えるその顔に、見慣れているはずの祐羽だが、嬉しさ倍増になる。
「わあっ?!」
抱き上げられ九条の上に乗った祐羽は、有無を言わさずキスを施される。
軽いキスに頬を染めて九条を見つめると、目が優しく笑っていて、祐羽は嬉しくて叫びそうになった。
「えへへっ」と照れを誤魔化し笑いして、それから九条の胸に頬をくっつけた。
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