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今まで女しか相手にしなかった九条が男を相手にするのはもちろん初めてのことで、だからといって戸惑ったり悩むことは不思議となかった。 顔が可愛くて大人しそうな様子が自分の好みで、正直一目惚れだったからだ。 とはいえ祐羽は男だ。 女の様な柔らかでもなければ豊満な乳房もないが、細身でスッポリと腕の中に収まるサイズ感が良かった。 また性格も見た目の通り優しく穏やかで、それでいて喜怒哀楽がハッキリしていて好ましい。 天然でどんくさいのが玉に瑕だが、そこが魅力であり九条の感情を動かすのだ。 とにかく、祐羽は九条にとって特別な存在になっていた。 だからこそ、可愛いと本気で思うなら今が解放する時だろう。 まだ高校一年生。 自分が強姦し関わった過去は変えられないが、祐羽が人生をやり直す時間はたくさんある。 高校生活を満喫し、就職して、恋人をつくり、いずれは家庭を持って幸せな人生を歩ませてやるのが、恋人として、歳上の役目だろう。 「ふぅ……」 そう思うのだが、祐羽の笑顔が脳裏を過り決心が鈍りそうになる。 隣に並んで笑う祐羽の姿が霧散すると、次に ふと前に父親から言われた言葉を思い出す。 『将来はこの仕事を理解し、お前を支えてくれる女がいいんだからな』 九条は身を起こすと、背凭れへ寄り掛かり溜め息と共に天井を仰いだ。 「……」 祐羽を家に帰して、もう一切会わない様にする。 そして、先伸ばしにしてきた結婚を考えようと九条はこの先の道をぼんやりと描きつつも、祐羽の部屋へと続く廊下へ無意識に視線を向けた。

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