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そんな自分が祐羽と別れ、二度と会えない生活に果たして我慢できるのか?
ここでもう一度自分に問いかけて、九条は自嘲気味に笑った。
「もうやめだ」
まったくもって自分らしくない。
無理矢理奪った祐羽の人生を今更綺麗事を並べて心配するなど笑える話だ。
そして解放してやるといいながら、やっぱり放せないとは自己中心的にも程がある。
そこで自分がかつて一度でも他者優先などしたことなど、あっただろうか?
祐羽の為なら、できる。
唯一無二で、心底好きだからだ。
そして、好きだから、愛しいからこそ危険がつきまとう自分の元から離したかったのは心からの本当の思いだった。
しかし、逆に自分の側より安全で安心な場所など無いのではないだろうか、と思う。
祐羽の人生にこれ以上後悔など無いように自分が全力で何でも叶え、全力で守ってやればいい。
いつも祐羽が笑顔で祐羽らしく暮らせるのが自分の願いなのだから。
泣いている祐羽の事が気になって気になって、いてもたってもいられない。
自分の人生から切り離すことなど、出来やしない。
常に手元に置いて、思い切り甘やかせてやりたい。
こんな風に思える相手が出来た事実に、気恥ずかしさを覚えると同時に心の中がじんわりと温かくなってくる。
案外自分は普通の単純な男だったのだなと気づく。
「くっ、…はははっ」
初めての感情に思わず声を出して苦笑した。
「いつから遠慮する様な性格になったんだ俺は」
遠慮なんて言葉、無用の長物だ。
九条は口元に笑みを浮かべると、己の安易な考えで泣かせてしまった愛しい恋人の元へ向かう為、ゆっくりと立ち上がった。
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