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「別れる…九条さんと別れるなんて…やだ」 自分で言った別れるというワードに再び涙が溢れてくる。 この作戦が失敗したらと思うと急に怖くなってきた。 「勝手に決めないでほしいよ…」 ほんと、何でそんなこと九条さんが勝手にひとりで決めちゃうの? 相談するのが普通だよね?! 「組長さんでも部下の人と相談したりするでしょ?何で僕とは相談出来ないの?!」 九条は特に部下とは相談せず独断ではあるのだが、そんなことは知らない祐羽。 なんだか次第にムカムカとしてきた。 初めて純粋に九条への怒りを覚え、顔をむうっとさせていく。 元から僕の意見は聞かない強引な人だったけどさ、今は付き合ってるんだし。 ほんとに僕の気持ちも聞かないで、九条さんってば勝手に…むぅーっ。 「あ~っ!もう怒った!!」 祐羽は立ち上がると枕を手にし、それからバーンッと部屋のドアを勢いよく開け放った。 そして怒りを露にする為、ドスドスと…実際にはトントン程度ではあるが…足音を立てながらリビングへと向かった。 感情の赴くままに突き進んだ祐羽は、部屋に入るとソファの前に驚いた様子で自分を見る九条をキッと睨んだ。 「九条さんの…九条さんの、バカーッ!!」 そう叫ぶと同時に手に持っていた枕を「えいっ!」と言いながら全力で投げつけた。 大好きな九条だが、今は勝手に別れると決めた事に怒りしかない。 おまけに投げつけた枕を難なくキャッチされて、余計に腹が立った。 「わぁんっ!何で取るんですかぁっ!!」 地団駄を踏む自分を九条が静かに見守ってくるのも、なんだか益々怒りに繋がっていく。 「祐羽、」 近づいて手を伸ばす九条から一歩逃げて睨んだ。

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