795 / 1012

34

ハッ!だ、ダメだ! 誤魔化されないもん。 優しく説得されても別れないんだから!! 祐羽は九条の胸元を押して顔を離すと、自分の気持ちを言葉にしようと涙をぐいっと拭い、唇を引き締めた。 今はっきりと思いを口にしなければ絶対に駄目だと、自分の心が強く訴えている。 祐羽は小さく呼吸を数回繰り返し息を整えてから口を開いた。 「あのっ、九条さん。僕の話し、聞いてください」 祐羽が真剣な顔を向けると、九条が視線で先を促した。 「確かにこの先、もしかしたらまた危ない事があるかもです。だけどそれって、危ない種類が違うだけで、普通に暮らしてても色々あると思うんです。まぁ、あんまり今回みたいな怖いことは無いと思いますけど…」 九条が祐羽を腕に再び抱き寄せる。 「続けろ」 そう言いながら優しく背中を撫でられると、抵抗する気持ちが起きなくて(九条さん、ズルい…)と、口を尖らせた。 九条の腕の中で大人しく話を続けることにする。 「だけど僕は、怖い思いをしても九条さんと別れたいなんて思わなかったですし。第一に九条さん、ヤクザ屋さんもしてるじゃないですか…今更です」 その言葉に九条が「確かに今更だな」と小さく笑った。 「それに、さっきも考えたんですけど、絶対に九条さんと一緒がいいって思ったし、そう決めたので」 そう言い切って顔を上げ、九条を見つめる。 いつもの様子で見下ろす九条に、自分の強い意思を更に伝えるべく目に力を込めた。 「これからまた何かあったとしても、今度は迷惑掛けない様に自分でなんとかします」 今回の経験が祐羽の心を少し強くしていた。 「だから…だから九条さんと、別れたくないです。一緒に居たいです!!」 絞り出す様な声でそう訴えた。

ともだちにシェアしよう!