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ハッ!だ、ダメだ!
誤魔化されないもん。
優しく説得されても別れないんだから!!
祐羽は九条の胸元を押して顔を離すと、自分の気持ちを言葉にしようと涙をぐいっと拭い、唇を引き締めた。
今はっきりと思いを口にしなければ絶対に駄目だと、自分の心が強く訴えている。
祐羽は小さく呼吸を数回繰り返し息を整えてから口を開いた。
「あのっ、九条さん。僕の話し、聞いてください」
祐羽が真剣な顔を向けると、九条が視線で先を促した。
「確かにこの先、もしかしたらまた危ない事があるかもです。だけどそれって、危ない種類が違うだけで、普通に暮らしてても色々あると思うんです。まぁ、あんまり今回みたいな怖いことは無いと思いますけど…」
九条が祐羽を腕に再び抱き寄せる。
「続けろ」
そう言いながら優しく背中を撫でられると、抵抗する気持ちが起きなくて(九条さん、ズルい…)と、口を尖らせた。
九条の腕の中で大人しく話を続けることにする。
「だけど僕は、怖い思いをしても九条さんと別れたいなんて思わなかったですし。第一に九条さん、ヤクザ屋さんもしてるじゃないですか…今更です」
その言葉に九条が「確かに今更だな」と小さく笑った。
「それに、さっきも考えたんですけど、絶対に九条さんと一緒がいいって思ったし、そう決めたので」
そう言い切って顔を上げ、九条を見つめる。
いつもの様子で見下ろす九条に、自分の強い意思を更に伝えるべく目に力を込めた。
「これからまた何かあったとしても、今度は迷惑掛けない様に自分でなんとかします」
今回の経験が祐羽の心を少し強くしていた。
「だから…だから九条さんと、別れたくないです。一緒に居たいです!!」
絞り出す様な声でそう訴えた。
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