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「もうっ!九条さん、笑って誤魔化そうとしてる!」
「誤魔化そうとはしていない」
むむっと眉をつり上げた祐羽に、九条が益々笑う。
「!!」
珍しいその笑った顔を祐羽は頬を染めて見つめた。
笑ってくれる九条に胸が熱くなる。
九条さんがこんな風に笑うの初めて見た。
カッコイイけど、なんだかちょっと可愛いかも。
「九条さん…。やっぱり僕、別れます。って、言ったらどうします?」
意地悪な祐羽の言葉に息を詰めた九条は、直ぐに抱き締めてきた。
「くそっ、俺を試しやがって」
安堵した様子で祐羽の首筋に顔を埋めてくる。
「そうさせたのは九条さんですよ?反省してますか?」
「ああ、してる」
「じゃぁ、許してあげます。でも、僕、本当に悲しかったんですからね」
しょぼっとすると、九条が例の如く髪にキスを幾つも落としてくる。
これをされると嬉しくて絆され、祐羽に勝ち目はないのだ。
もう憂うことは何もない。
「詫びに何でも買ってやるし、何処へでも連れて行って、何でもしてやる」と言ってきた。
(そんなのいらないのに)と思ったものの反省して貰う意味も込め、せっかくだからと考えた。
うーん。何をして貰おうかなぁ?
そうして考えに考えた結果「じゃぁ肩車と、あとは僕が満足するまで抱っこいっぱいしてください!」とお願いした。
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