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申し訳ないと思いつつ楽チンだし楽しいし、くっついていられるのが嬉しいので、九条が嫌がるまではいいかと考えている。
そうして肩車を楽しみ終えると猿の様に九条の体を伝い降りていく。
初日は抱いて降ろして貰ったが、次の日は自分ひとりで降りたいと言って、案の定床に落っこちた。
なのでそれ以降、途中で落ちないか大丈夫かと心配する九条が直ぐにキャッチできるようにとコッソリ手を添えてくれているのだが、それには気づいていない。
ひとりで上手く降りられた時は「ぬふふっ、成功」と恋人の心配など露知らず、ひとり笑顔で満足している。
何度か実際密かにキャッチしている九条の心労は絶えない。
正直、祐羽の成功も怪しい物が大半なのであった。
一度うっかり後ろに反って命の危機を感じたことがあった。
九条の強靭な腕に救われた経験から、はしゃいで調子に乗るのはほどほどにしているらしい。
とはいえ、やることに代わりないので九条からすればそろそろ肩車に飽きて欲しいところであった。
そんな肩車は、食後ソファまで運ばれる時のルーティーンだ。
「今日は劇場版のこれ観ませんか?」
「何でもいい」
そうしてソファに座った九条の足の間に座り祐羽がアニメ映画を夢中で観ていると、インターホンが鳴った。
「あれ?誰か来ましたか?」
こんな時間に珍しいので、首を傾げる。
「出てみろ」
「はい」
眞山さんかな?と思いながらインターホンに応答した祐羽は、そこに映った人物に驚き声を上げた。
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