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「えっ!?嘘っ、本物ですか!?」
驚きと嬉しさで興奮する祐羽に、九条が「早く開けてやれ」と促す。
その口振りからして、インターホン先の相手が誰なのか、今日来ることも知っていたらしい。
「はっ、はい!今開けますね!!」
祐羽が玄関に慌てて向かう後を九条も着いて来る。
「えっ、でも何で?!これ、僕の夢ですかね?!」
ソワソワして落ち着きのない自分の姿を九条に笑われる。
「九条さん知ってたんですね!?何で教えてくれなかったんですかーっ!」
祐羽の抗議に九条が「嬉しさ倍だろ」と鼻で笑うと、玄関ドアを顎で指した。
するとピンポーンとタイミングを合わせたかのようにチャイムが鳴った。
「はっ、はい!!」
祐羽が慌ててドアを開けると、そこには既に懐かしくなっていた相手が居た。
「我慢できなくて会いに来ちゃったよ」
「外崎さん!!」
にっこり笑った外崎が涼しげな服を身に纏い立っていた。
祐羽は目を潤ませ、それから勢いよく抱きついた。
「会いたかったです!」
「うん。僕もだよ!」
ふたりでギューッと抱き合う。
外崎さんだっ、外崎さんだ!
「外崎さぁ~ん」
「祐羽く~ん」
それから、うるうるしているお互いの顔を見て笑いあった。
嬉しくて嬉しくていつまでも抱き合っていれば、後ろで様子を見ていた紫藤が「外崎…」と呆れた様子で声を掛けてきた。
それで、お互い我に返った。
「あっ、すみません。長々と…」
そう言いながら外崎が名残惜し気に腕を解くと、その言葉に祐羽も申し訳ないと頭を下げた。
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