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「コイツが、そんなんなるんは珍しいけぇな。こっちの世界で若い頃からずっと俺の世話ばっかりしとる。じゃけぇ、気を許して遊んだり付き合える歳の近い相手がおらんけぇの」
「外崎さん…」
外崎さんは大変な立場に居るんだもんね…気を抜いて何でも、それこそ仕事以外の何でもないような話が出来る相手って、少ないんだろうな。
「それじゃけぇ、お前らは特別。で、ソイツのポンコツを治す為に東京まで来たワケなんよ。のう、律?」
紫藤は祐羽の顔をまっすぐ見つめて話していたが、最後の言葉と共に外崎へと投げた。
見れば、頬を染めた外崎が口元をアワアワさせている。
「りゅっ、隆成さん、何でそんな話までするんですか~!」
「本当のことじゃろうが」と、紫藤が意地悪く笑う。
「確かにそうですけど、ポンコツの下りはいらないじゃないですか!会いに来ただけで十分ですよ!」
照れからの怒りを露に、プンスコと紫藤の胸元を殴りに掛かる。
本気で殴らないものの二、三回ポカスカやれば「おう。事実じゃろうが。律はこんくらいのことで恥ずかしいんか?」と小馬鹿にされ「う~」と外崎は恥ずかしすぎたのか顔をそのまま伏せた。
そんな姿を見て、外崎が一番信頼している相手はやっぱり紫藤なのだと、鈍い祐羽でも分かった。
けれど、さすがに「あれが可愛い」「これが話題から行ってみようよ」という様なお気楽な内容だったり、フードフェスタの様な所でプリンだ何だと大騒ぎはなかなか出来ないだろうなぁと思った。
外崎も大人だが、紫藤は組織で上の立場に居る。
九条を見ていれば分かるが、紫藤は常に忙しいだろうし、それをサポートする外崎も自然と忙しく自由な時間も限られるはずだ。
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