そうなると余計にお気楽な話をして息抜きするなど難しく、寂しい思いもしているのかもしれない。 第一に、紫藤がそんな話を聞いて話題に乗ってくれるとは到底思えなかったし、外崎もしようとは思わないだろう。 自分には有難いことに、九条の事や日常のこと、趣味のことまで共有でき、実際に直ぐに会える中瀬が居る。 それを考えれば、外崎の気持ちも分かる気がした。 濃密な時間を共に過ごし、まるで兄弟みたいな絆が出来、その後は時間は短いながらも一緒に楽しい思い出を作った相手。 その相手と物理的にも離れ会えないのは辛い。 「外崎さん。いつまでこっちに居られるんですか？」 可能なら、また新しく思い出を作りたい。 そして、次に会える迄のパワーにして貰いたいと祐羽は思った。 「今回は隆成さんの組関係の事で来たのもあるんです。だから、その前に会えて良かった」 少し眉を垂らして残念と笑った外崎に、祐羽も眉を垂らした。 「…そうですか」 せっかく会えたのに、遊べないのかぁ…。 祐羽が小さく溜め息をつくと、そんなふたりの姿に紫藤が笑った。 「律。お前、こっちに仕事するつもりで来たんか？」 「え？だって、隆成さん言ってらしたじゃないですか？新規の計画が、って」 「あ？確かに言ったな」 「ほら」 もう忘れたのかと、律が呆れた顔をする。 「バーカ。忘れてねぇよ。俺をじじい扱いするな」 紫藤は盛大に顔をしかめた。