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正直、思い出したくない事件だ。
けれど、今は絶対に安全であること、そして心も安定しており、この世界で生きていくと決めた以上は少なからず避けられない事だった。
あの出来事にはっきり言ってトラウマがある。
しかし、九条と一緒に居ると決め、次に何かあったら自分で頑張ると言ったのだ。
だからこそあの時を振り返り、そこから学べる事があるのなら、自分の力へと変えたいと思い話をすることに抵抗もなく自然と入っていった。
流石に監禁された話はそれぞれサラリと流したが、中瀬が連れて行かれた後の事は一切聞いていなかった祐羽と外崎は、事の顛末を知らないのだ。
そこで、あの後の事を中瀬に聞くことにした。
「あの後、俺は…」
中瀬が思い出しながら話を始めた。
あの時、九条の重要人物と勘違いされた中瀬は、車でとある場所へと移送された。
車内では「本当にコイツか?男だぞ」と疑われた以外に特に何もされることはなかったが、男達の話を聞く限り少人数の独断での反抗ということだけが分かった。
そして、その首謀者と合流する為に別の貸別荘へと向かったところ既に首謀者が拘束されていたのだ。
「えっ!?九条さん達がもう居たって事ですか?」
「どうして分かったんだろう?」
祐羽が驚きに目を丸くし、外崎が眉間に皺を寄せた。
本来ならば、そこで首謀者と合流して中瀬を人質に九条達を呼び出してから交渉を始めるものだが、どうやら情報が筒抜けであったらしい。
「建物の敷地に入った瞬間に後ろを車で塞がれて、後は簡単。数で圧倒、あっさり降参」
祐羽は海外映画のドンパチなシーンを想像していただけに、特に酷い事にならずに済んだと胸を撫で下ろした。
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