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「それで、今度また残りも見に行こうって話になったんです」
「まだ時間はある」
夏休みも残っているので、九条の言葉に大きく頷いた。
「明日こそ観光行だー!って、なったんですけど。九条さんは、」
「行けないから、お前達で行ってこい」
「そうですか…」
答えを聞いてションボリしてしまう。
九条とも一緒に行きたかったと思いつつ、仕事なのだから仕方ないと自分に言い聞かせ顔を上げた。
「でもっ、日曜日は大丈夫ですよね?」
「日曜?」
「海に行く予定を立てたんです!テレビでちょうど海の家をやっていたので」
海の家特集を観ていれば美味しいグルメも出てきて、これは行かねばとなったのだ。
「えっと…その…無理、ですか?」
黙ったままの九条に不安な顔を向ければ頭をポンポンされた。
「調整する」
その言葉に笑顔でお礼を言った。
「わわっ、ありがとうございます!さっそく中瀬さんと外崎さんに連絡しなくちゃ!」
祐羽は九条の膝からピョンと飛び降りると、テーブルの隅に置いていたスマホを手にしてメッセージを送る。
嬉しすぎて、メッセージの最後に浮き輪を身につけた海水浴ワンコのスタンプを送った。
やったー!みんなで海だ、海!!
あっ、でも水着持ってないから買わなくちゃいけないな。
中瀬さんと外崎さんは持ってるかな?
早くも海水浴へと気持ちが昂る祐羽は、妄想の世界へと旅立つ。
中瀬達と水着を買いに行って、海で泳いだり、美味しいものを食べたり。
今から既にワクワクが止まらない。
「祐羽」
「は、はい!」
すっかり自分の世界に入り込んでいた祐羽は、九条の声に我に返った。
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