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案内されて進んでいれば中瀬がチラリと振り返るので祐羽もそちらを向いてみれば、先程の男がこちらをジッと見ていた。
「外崎さんも罪深いですね」と中瀬が言うが、鈍い祐羽と外崎は頭に『?』を浮かべるだけであった。
そうこう話ながら歩いていれば「それでは私はここまでですので」とマンションの係が頭を下げた。
金の縁取りがされた自動ドアが開き中へと入れば、深いレッドの絨毯が敷かれた広い廊下が現れた。
照明が落ち着いた色にされており、一気に重厚感が増す。
「僕、もう既に圧倒されてます」
「僕もだよ」
祐羽の言葉に外崎が同意した。
「高級マンションなのは分かってたけどマジで凄いな」
「奥にコンシェルジュが居るみたいだよ」
外崎の言葉で祐羽が視線を向ければ、確かに突き当たりにカウンターがあって、人がふたり居るのが見えた。
「ホテルみたい!」
そこで中瀬が気づいた事をふたりに話す。
「なぁ、さっきの入り口にもコンシェルジュが居たの気づいてたか?」
「「ええっ?!」」
全く気がつかなかったふたりは、目を丸くした。
ここはプライベート重視のマンションらしく、関係者以外が入るとなるとインターホンで直接家主、または宅配とは別側にあった来客用のカウンターへ声を掛ける必要がある様だ。
その為、先程のエントランス部分でさえ空間も広く豪華な造りをしており、応接セットが幾つか置かれていたのだ。
「中瀬さんの観察力、凄いです!」
「元探偵を舐めんなよ」
中瀬がドヤ顔で笑い、満更でもなさそうだ。
祐羽と違い、入り口の時点で色々とチェックをしていたのは、やはり探偵を生業にしていた頃の癖なのかもしれない。
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