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気のせいだと思いつつ、チラッと視線だけを向ける。
居るな…。
ちび祐羽が、困った顔でお菓子と自分を交互に見ている。
こいつは一体何なんだ?
得体の知れないとはいえ、顔も声も祐羽だ。
まさか祐羽が小さくなったか?とも思ったが、中瀬から連絡が無いということは本人に変わりなしということである。
第一に人間が小さくなるなど、フィクションの世界でもあるまいし。
グー…と腹の虫が鳴り、ちび祐羽が情けない顔をしながら腹を押さえた。
この生物が何かは分からないが、愛しい恋人と瓜二つのいきものを無視できるはずもなく。
九条は茶菓子に手を伸ばすと袋を開けてやる。
(食べてもいいんですか?)
ちび祐羽の問いに無言で目だけで応えると、嬉しそうに茶菓子に飛び付いた。
端に食いついて(ありがとうございます!)と礼を述べる祐羽に目を細める。
「一臣。お前どうした?」
そうしていれば、戸惑いがちな声が掛けられそちらに顔を向けると、篁が顔を顰めていた。
九条は然り気無く、ちび祐羽を手の平で隠した。
見つかっては大変なことになるだろう。
隠しつつ、素知らぬ顔をしてみせた。
「ぼんやりするなんて、お前にしては珍しいな」
篁のその言葉に申し訳なさが起きる。
正直、話しは何も聞いていなかったからだ。
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