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「すみません」 「いや、それより大丈夫か?調子が悪いなら我慢せずに言え」 「いえ、大丈夫です」 (九条さん、どうしたんですか?お菓子は?) 人が隠してるというのに空気を読まないちびは、手の平から指によじ登り顔を出した。 慌てて隠したものの、誰もちび祐羽の声も姿にも気がつかないということは、自分以外には見えていないらしい。 菓子を小さくして渡してやると喜んで食いついた祐羽だったが、ひと口入れてから動かなくなってしまった。 どうした? (うっ…!痛い) !? 急に頭を抱えて痛みを訴えたちび祐羽は、言葉を残して煙に巻かれたかの様に、九条の手元から突然消えてしまった。 驚いた次の瞬間、九条は立ち上がった。 「あ?急にどしたんな?」 突然の行動に紫藤が眉間に皺を寄せた。 「緊急の用が出来たので、すみませんが後日改めて」 その言葉と表情から篁はただ事ではなさそうだと頷いた。 九条が篁との約束を反故にする事は滅多な理由ではないからと知っているからだ。 頷いた篁を確認すると「では、失礼します」と足早に眞山と共に部屋を出る。 「マンションに戻るぞ」 「はい。中瀬に連絡入れます」 九条の言葉、それだけで眞山が応える。 「おーい!何な~?説明せいやーっ!」 そんなふたりの後ろから紫藤が「ワケわからん」と言いながら着いてきた。 三人は急遽マンションへと戻ることになったのだった。

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