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九条の手から『ちび』が消えたその頃、テニスコートで祐羽達はトラブルにあっていた。
眞山が連絡するも、着信に対応するどころではなくなっていたのだ。
打ち返したボールが隣コートの男に当たってしまい謝りに行った祐羽だったが…。
「痛ってぇ~」
「おい、大丈夫か?」
ボールが当たった男が呻き、仲間が声を掛ける。
「わぁっ、どうしよう!当たっちゃった」
男の元へ謝りに行こうと祐羽が慌てて小走りに駆け寄って行った。
「す、すみませ、わぁっ!」
慌てすぎたせいか足がもつれ、躓いてコケッとなり思わず両手を地面につく。
間一髪転げることは無かったが、最悪な事がおこってしまった。
手に持っていたラケットが持ち主を離れ、なんと男の脛に当たってしまったのだ。
男が今度こそ盛大な悲鳴を上げた。
「痛えぇぇぇっ!!」
「あっ、すみません!」
四つん這いのまま頭を下げるとボカッと頭を硬い物で叩かれたのだ。
「うっ、痛いぃ~」
痛みに頭を押さえて蹲った祐羽に男がラケット片手に鼻で嗤うと、中瀬が毛を逆立てた。
「テメェ!!!」
怒り心頭の中瀬と、祐羽に駆け寄る外崎。
男達は、おちゃらけて見せたり盛り上げようとしたものの女子の心は既に中瀬に向いており、それが面白くなかった。
そして内心イライラしているところに祐羽の方向音痴ボールが直撃したのだ。
「大丈夫?」
「はい。でも…」
視線の先には中瀬と男達が睨み合っていた。
こうしてテニスコートは一瞬で修羅場と化したのである。
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