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それから何とか九条の手の平から逃れた祐羽は、ムムッとして抗議の声を上げた。
「九条さん急に何するんですか?苦しいじゃないですかっ、て、わぁっ?!」
すると、九条に抱き上げられ勢い良く側にあったソファに投げ飛ばされた。
高級でフカフカなソファのお陰で痛くも痒くもないが、ビックリするには十分で「急に何するんですか?!」と言いながら祐羽は何とか起き上がる。
乱暴に自分を扱った恋人を見れば、こちらを見ていない。
口を塞がれソファに投げられ、そっぽを向かれる意味が分からない。
「九条さん?僕、何か九条さんを怒らせる様なこと言いましたか?」
「怒ってはない」
じゃぁ何で?
どれだけ恋人の事を好きかと言葉として本人の口で語られる程、恥ずかしいものはない。
しかし祐羽には理解が及ばず、九条が珍しく羞恥でだんまりになったことに気づかない。
祐羽はいい意味で天然、悪くいえば鈍いのだった。
「その話はもういい。続きがあるから話を聞け」
「はい」
気にはなったものの本人の口から言われれば、もう話は終わったことになる。
祐羽は九条の話に改めて耳を傾けた。
「俺の仕事はトラブルを避けては通れない事は分かるな?」
その言葉に祐羽はしっかりと頷いた。
体験して嫌というほど理解している。
「何か大きなトラブルがあれば、ここへ逃げろ」
「え?」
「さっきのトラブル程度なら問題ないが、万が一ということもあるだろう」
「なんだか忍者屋敷みたいですね!」
祐羽が嬉しそうに言えば「セーフルームだ」と呆れられた。
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