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一瞬の無言の後、呆れたらしい九条から「面白いからこれからもボケてろ」と酷い事を言われて(九条さん、酷い…)と軽くショックを受けていれば、コイコイと指で呼ばれる。
真剣な話だったのかもしれないが、忍者屋敷みたいと思ったらつい口から出てしまったのだ。
だって、本当に忍者屋敷みたいだし。
九条さんだって絶対に始めはそう思ったに違いないんだ。
しかし実際、九条が『忍者屋敷みたい』など、ただの一度も思った事はもちろん無い。
自分だけボケ扱いされ、ちょっとムーッとしつつも後を素直に着いて行く。
「向こうの部屋と違って簡単には出入り出来ない造りにしてある」
確かに玄関もなければ窓も無い。
唯一あるとすればバルコニー側に少し窓がある位だ。
窓から外を見れば見晴らしがいいのは勿論だが、近くには他に同じ位の高さがある建物は無く、これだと狙われる可能性は限りなく低いだろう。
「危なくなればこの部屋に逃げろ。それからドアを閉めて鍵を掛けろ。いいな?」
「はい」
子どもに教え諭す様に九条が念押しして、それに祐羽がコクリと頷いた。
それから話ながら九条は先へと進むと、ある部屋へと入って行く。
「ここは?」
「前に使っていた書斎だ。最終的にはここに避難しろ。だが、万が一があったとしても使わないで済む様に俺がする」
九条が日本最大の組織の傘下とはいえ、その組織のトップから溺愛されており、本人も周りから一目置かれる実力者である。
その為、早々危機を覚える必要はないだろう。
しかし、今回広島であった事件と同じ様な事が起こらないとは限らないのだから。
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