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恐ろしい時間
華奢で軽い祐羽はソファの上で無駄にボスンと沈んでしまうと、慌てて起き上がろうとした。
しかし腹筋の無さからか、手足をバタバタと動かすだけで終わってしまった。
無情にも両手は空をきり、足も同じく滑稽な動きを見せるだけで、次には上から押さえ込まれてしまう。
結果、バタバタと手足を動かす事さえ無理になる。
「わぁっ⁉」
祐羽は驚きに悲鳴に近い声を上げて、目を見張った。
その上から先程、社長と呼ばれた大きな男が下卑た笑みを浮かべながら乗り上げてきた。
ただでさえ沈んでいたソファが、益々沈みこんだ。
すると男は、両腕を祐羽の顔の横へと持ってくる。
「ヒ…ッ」
思わず掠れた声が出てしまう。
顔が近い。
中年の恰幅の良い男は、脂ぎった顔をニタニタと崩していた。
この小さな獲物をどうしてやろうかと、心底愉しげだ。
密着してきた腹もたっぷりと脂肪をつけていて、男がいかに贅沢で偏った食生活を送っているかが判るというものだ。
ギシッとソファの悲鳴が聞こえる。
「よしよし。今からたっぷりと可愛がってやろうなぁ~」
鼻歌でも飛び出す勢いで男が言った。
口から放たれる口臭に、祐羽は思わず顔を背ける。
そして祐羽は羽両手で男の胸を突っ張り返そうとした。
少しでも相手が隙を作ったら逃げ出すつもりだったが、もちろんそんな簡単に事は運ばなかった。
「や、ヤダッ‼」
男が祐羽の腕を掴みソファへと縫い付ける。
それから男が顔を祐羽の顔へと、ゆっくりと落としてきた。
分厚い唇が口へ触れる寸前、祐羽は顔を思いきり背ける。
すると男の唇は祐羽の耳の下へと落とされた。
「ひゃ…‼」
唇で触れたまま、そのまま下へと滑らせていく。
辿り着いた首筋を肉厚な舌で嘗め始める。
熱い舌が純潔を犯そうと肌を這い回る。
興奮した男の荒い息遣いが気持ち悪くて、祐羽は鳥肌を立てる。
「気持ち良いのかッ?」
それを見て検討違いな事を男は言いながら、祐羽の服を脱がせていく。
抵抗しようにも思うように出来ない。
体格の差から、祐羽の敵う相手では無い。
胸元がはだける。
まさぐる手の平の気持ち悪さと、この後に続けられる行為の想像から、祐羽の顔色は失われていった。
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