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自分が代わりに奢ることも考えたが、あのふたりだと絶対に遠慮するに違いない。
それにひとりだけクーポン、ひとりだけ奢るのも少し考えてしまう。
あと、クーポン券はいわゆる招待券みたいなもので、文化祭をより楽しんで貰うには持ってこいだと考えたのだが。
(そんな怖い顔しなくても…)
自分と他のクラスメイト男子への対応の差をひしひしと感じ、祐羽は悲しくなる。
(何で僕だけ?)
そう思いながら相手を見れば、益々表情が険しい。
気怠そうにしてイライラを隠そうともしない相手に、祐羽は不安から唇を噛み締めた。
無意識にしている庇護欲をそそる表情が、逆に女子の苛立ちを煽っているとは思わず、祐羽は「ご、ごめんね。でも、ひとり今なら二枚まで貰えるって聞いたから…」とお伺いを立てる。
クラスメイトが話しているのを偶然聞いた祐羽は、委員長に声を掛けたのだが。
(まさか、よりによって鈴木さんが持ってるなんて)
てっきり委員長が持っていると思っていたクーポンは、いつでも融通が効くという利点の味を知っている鈴木が管理していたのだ。
祐羽にだけ厳しい鈴木だが、他のクラスメイトには上手く立ち回っているからか、こういう時にもある程度の意見が通り有利に働く。
あとはギャルという勢いに加え、鈴木の性格からくる押しの強さと迫力により、クラスカースト上位で言いたい放題だ。
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