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それだけでなく、学年でも女子のトップスリーには君臨している有名人でもあった。 派手な髪色にピアス、付け睫越しに睨んでくる目、そして紅くリップの塗られた唇からは今にもキツい言葉が放たれそうで。 そう思っていれば「はぁっ…」とわざとらしい溜め息が溢れ、それだけでも祐羽を震え上がらせるには十分だった。 夏休みに拉致されて怖い思いをしたが、あの件とは別の怖さがある。 幼少期からのトラウマと苦手意識は一朝一夕でどうこうなる物では無い。 それにあの時は中瀬と外崎、そして九条達が何だかんだと守ってくれたが、ここは学校。 誰も守ってはくれなくて、自分の力で乗り越えなければならない。 今まで小中も小さなトラブルは多少あったものの、この鈴木と取り巻き女子からの圧力は比較にならない。 「お願いだからそのっ、クーポン、一枚譲ってくれないかな?」 眉を垂らしてお願いする祐羽は廊下の死角に居る為、誰も気づかない。 どこか遠くに聴こえる生徒達の声に、祐羽は自分だけ別の世界に居る様な気持ちになった。 同級生、それもクラスメイト相手に下手から願い出なければならない情けなさにウルッとなりそうで、なんとか踏ん張る。 だが予想通り相手からは無情な返事が来た。 「ごめんけど、もうクーポンの余分無いから」 「えっ…でも、さっき他の人が、」 「しつこい。ウザい。無いモンは無いの」 祐羽の言葉は相手の強い口調に遮られてしまう。

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