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「って、何?もしかして泣いてんの?」 それに祐羽が慌てて首を振って否定するが「たかがクーポンでウジウジしないでほしいんだけど。あとさ~賀川くん達に媚売るのやめてくれる?」と理不尽な言葉を浴びせられ、祐羽は益々唇を噛み締めた。 ウジウジするのは改善したいとは思っているが、媚を売るとかは意味が分からないし酷い言い掛かりだと反論しようとした。 「マユ~!」 そこへ鈴木の友人が能天気な声を上げながらやって来た。 「アヤカ~おーい!」 鈴木は相手に気がつくと嬉しそうに手を上げて応える。 「おーい、って何やってんの?」 「ん?べっつに~」 「…あぁ、なるほど」 友人でクラスメイトでもある森田は、そこに祐羽が居る事に気づくと、小馬鹿にした表情を向けた。 「じゃっ、そういうワケだから」と言って鈴木は森田を連れ立って教室へと戻って行く。 その後ろ姿を何も言えないまま見送っていれば午後の予鈴が鳴り響き、祐羽はしょんぼりと教室へと向かった。 トボトボと自分の席に戻り教科書やノートの準備をしながら溜め息を小さく吐く。 そんな祐羽は少しざわつく教室内で「一枚追加?オッケー。その代わり一人二枚までだから」と言う鈴木の声を拾った。 鈴木に相当敏感になっているのか、はっきりと聞こえてきたのだ。 そちらに顔を向けると、隣の席の男子に無くなったと言っていたはずのクーポンを鈴木が手渡していた。

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