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(やっぱりクーポンの余分あるんじゃないか。嘘つくなんて酷い!)
悔しくて悲しくて、祐羽は再び涙が溢れそうになったが、教師が入ってくると慌ててチョロリと出た涙を拭い教科書に視線を落としたのだった。
しかし授業中もモヤモヤしたものは収まらず、ついついラクガキなんかして気分を誤魔化そうとし、授業を聞いてなかった。
これでは勉強を教えてくれている教師にも、そして九条にも申し訳ないと反省するが、それでも元気は浮上せず六時間目を終えた。
「なぁ、何かあった?」
体育の授業が終わり着替えを始めると、賀川が祐羽を周囲の邪な男子の視線からガードしつつ訊ねてきた。
どうやら様子がおかしい事に気がついたらしい。
それもそのはずで、無意識に溜め息ばかりついているし、体操服を前後ろ逆に着てしまったりと、心ここにあらずの表情をしていれば気がつかない方が可笑しいだろう。
それほどに祐羽は分かりやすかった。
「確かに。元気無さすぎるもんな」
反対側でガードしていた小野も着替え終えるとロッカーのドアを閉めながら祐羽に視線を向けた。
「え?あ…うん」
まさかバレていたとは思わず驚いたが、次には苦笑いするしかなかった。
「ほらほら、お兄さんに言ってみ?お悩み相談いつでもウェルカムだぜ」
小野が茶化すのは敢えてだと知っている祐羽は、その優しさに嬉しくなって「ありがと」と礼を伝えた。
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