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ちょこちょこと貰ったりしていたが、改めて九条が所謂セレブな人間だという事に気がつき戦いた。 (これからはなるべく断る様にしよう) 普段から美味しいお店へ連れて行って貰ったりで十分贅沢をさせて貰っているのだから、これ以上は分不相応というものだ。 だからといって九条の気持ちを蔑ろにしたくはないので、今度それとなく伝えようと決めた。 そんな風に頭の中でグルグル考えていれば、賀川に「知らなかったってことは、誰かに貰ったってことだろ。誰?」と訊かれる。 「えっ、九じょ…むぅ」 思わず答えそうになり慌てて口を変に閉じた事で、ふたりから胡散臭げに視線を向けられてしまう。 「くじょ…何だって?誰?」 賀川に聞き直されるが、何も言えない。 (九条さんって言ったらダメだよね。九条さんヤクザだし、社長さんだし迷惑かけちゃう) 昔からではあるが昨今特に暴対法によりヤクザへの風当たりは厳しい。 (九条さんのヤクザ屋さんは、ブラック企業じゃないんだけどな) 祐羽にとっては素敵な優しい恋人ではあるが、男同士の上に大人と子ども。 しかもヤクザという仕事をしているので、紹介したくてもやはり出来ない。 (ふたりにも言えないのに、お父さんとお母さんには何て言おう…) 今は九条は大きな会社を経営する社長という事しか知らないが、もしも家業がヤクザと知ったら両親はどう思うだろうか。 いつかはバレてしまうだろうけれど、その時が怖い。

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