中瀬の言葉に記憶を捻りだそうとする祐羽に「あ～あ～、その遠目にな、遠目に！」と言うと「そうですか」と返ってくる。 正直、安全策として中瀬が勝手に軽く調べていただけで、祐羽を介して会った事は無い。 本当に遠目に観察しただけだったので、今度の文化祭はある意味、近くで人となりが分かるチャンスであった。 そんな事は全く思いもしない祐羽は、中瀬の言葉をそのまま受け取ると、もう話は次に移る。 「一枚は中瀬さんに渡しておきますね。もう一枚は外崎さんに渡して…いつ渡そう？当日でもいいかなぁ？」 先に連絡だけしておいて、当日渡せばいいかと思い口にすると「せっかくだし今から渡しに行くか？今日はこの近くで仕事って言ってたし、まだ居ると思うから」 そう言うと祐羽の返事も待たずに早速連絡を入れてしまった。 「おっ、既読ついた。早っ！タイミング良いな、さっき仕事終わったってさ」 仕事の邪魔を心配していた祐羽は、その言葉を聞いて安心したと同時に、外崎と会える事も嬉しくて（早く車、着かないかな？）とワクワクするのだった。 そんな祐羽を乗せた車は住宅街を抜けて街中へと入り、目抜通りを走り続けて大きなビルの谷間を進み、とある建物の前で止まった。 すると人混みを掻き分けて…ではなく、人が自然と割れた場所から女神がこちらへと歩いて来た。 それは女神という名に相応しい美貌の外崎で、擦れ違った人達が思わず「ほぅ…綺麗」「美人…」と呟き見送ってしまう程の笑顔を見せていた。