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こればかりは仕方ないと思いつつもガッカリした気持ちは隠しきれず、祐羽は小さく肩を落とした。
「でも、やっぱり九条さんに接客したかったです」
「今年は無理だけど、もしかしたら来年来てくれるかもしれないぞ」
「来年は体育祭です」
「へ?」
中瀬の慰めの言葉に、祐羽はイジイジした様子で呟いた。
「僕の学校は毎年交互にやるんです。だから次の文化祭は再来年です」
「なるほど…。まぁ取り敢えず今夜、帰ってから簡単にでもいいから会長に文化祭ごっこみたいにすれば?」
「これからですか?」
「そうそう。料理作ったり、何か簡単なゲームして勝っても負けても何かプレゼントして、最後に疲れを解す様にマッサージするとか。とにかく会長をおもてなしするんだよ。文化祭に招待出来ない代わりです!って。前にハロウィンでも似たことやってたじゃん!あれだよ、あれ」
中瀬は名案だと言って目をキラリと光らせると「それなら会長も満足するし、俺も気兼ね無く行ける」と親指を立てドヤ顔を決めた。
「そうですね!今日はちょっと早いけど、簡単な文化祭ごっこして九条さんを楽しませてあげたいと思います!」
すると運転席からブフッと変な音、ではなく運転手が笑いを堪えた声が聞こえてきた。
「えっ?柳さん、何ですか?」
「いえ、これは失敬。お気になさらず」
広島旅行で九条から専属の運転手として紹介された柳だったが、事件の際に責任をとらされ一時期離れていた。
しかし、祐羽が「そういえば柳さん見ませんね?」「柳さん忙しいんですか?」と度々訊ねる為、怪我の完治と共に戻って来ていた。
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