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こうして無事に晩ご飯を迎える事に。
前もって形成していたハンバーグのタネをフライパンで焼き始めるのを九条はダイニングの椅子に座って眺める事にする。
大きく広いキッチンに小さな後ろ姿がなんとも可愛い。
そして、無駄にフライ返しで親の敵《かたき》の様にペチペチ!とハンバーグを何度も叩いている。
止めようか一瞬迷ったが、それさえも可愛いので黙っておく。
そうして火加減にソワソワしている横で、温め始めたスープの鍋が煮たっていて、思わず止めに行こうか悩む。
けれどこれは祐羽が頑張っている事だからと、椅子に座り直した。
そうしていれば、漸く気がついた祐羽が火を止めて中を確認。
覗き込んでお玉でクルクルして「よし」と頷いて、今度はサラダ用野菜の準備に取り掛かった。
ハンバーグの方は大丈夫なのか?という九条の心配は的中した。
あれだけ慎重になっていたはずのハンバーグは野菜の準備に気を取られている間に、やはり少し焦げてしまったらしい。
「あ!…大丈夫かな?これ、セーフ?セーフだよね」という不穏な声が聞こえたが、気づかない振りをしておく。
それから気を取り直したらしい祐羽は、上機嫌で謎の鼻歌を披露しながらハンバーグを皿に乗せる。
その横にハンバーグを焦がす原因となった野菜で彩りを添えれば、祐羽渾身のチーズ・イン・ハンバーグの完成だ。
スープだライスだと、せっせこ用意する祐羽の真剣な顔が可愛い。
「お待たせしました。ハンバーグセットです。お召し上がりください!」
そう言って側に立って、ワクワクした様子で自分が食べるのを待っている。
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