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「九条さん、くすぐったかったですか?」 「いや」 分からない程度に笑ったつもりが、雰囲気で気づかれたらしい。 それよりもマッサージが始まっていたことに驚く。 マッサージらしき刺激が無いのでこれから始まるものと思っていたが、様子を伺うと既に指で押してくれているのが分かった。 蚊でも止まったのかと思う程度の刺激では凝りが解れることもなく。 だからといって、恋人の気持ちを無下にも出来ず大人しくされるがままになることに決めた。 次第に祐羽の体重に心地よさを感じ始め目を閉じる。 あの小さな手で一生懸命マッサージしている姿を想像するだけで楽しく満足感に満たされた。 しかし、そんな祐羽の様子をこの目で見たくなってきた九条は「腰と背中は十分だ」と言って上から降りるように声を掛けた。 それには祐羽が不安そうに「う。気持ちよくなかったですか?」と訊ねてくる。 正直、特にマッサージによって肉体の回復が見込めたかといえばそれは無い。 とはいえ、恋人の頑張りを否定する気持ちはさらさら無かったので「いや。疲れがとれた」と頭を撫でてやると、犬の様に見えない尻尾を振って喜んでいる。 九条は体勢を変えると同時に祐羽の腰を持つと、仰向けになった自分の腹の上に乗せた。 「わわっ?!」 それから腹の上に寝そべる様に抱き寄せると、驚きながらも祐羽は九条の胸に自分の頬をぴったりとくっつけた。 少し照れた声で「これするの好きです」と呟いた。

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