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頭頂部を見ながら髪をもう一度優しく撫でると、祐羽は胸に顔をスリスリしてくる。 九条は次に背中をポンポンと叩いてやると、祐羽は益々力を抜いてまったりモードに突入した様だ。 こんな風に何もしないでくっついているだけで九条も心地よく癒され、祐羽が「これが好きだ」と言った意味が分かるのだった。 「祐羽」 恋人の名前を囁く様に呼んでみるが、全くピクリともしないのを訝しく思いもう一度呼ぶが、全く反応が無い。 案の定寝てしまった恋人に呆れつつ、九条も目を閉じて暫く仮眠を楽しんだ。 ・・・・・ 祐羽が目覚めたのは朝方だった。 それもベッドの上で、最初は「おしっこ」と寝ぼけ眼でトイレへ向かい戻って来たところで漸く意識がハッキリとしたのだ。 記憶を辿ると、九条へマッサージしたところで見事に途切れていた。 (僕は何てダメダメなんだろう) うっかり寝てしまった祐羽は九条を癒すどころか、癒されてしまっているではないか。 (九条さんの胸板が憎い!) あの心地よさは体験した者にしか分からないのだから。 そこで再び余計な考えが巡る。 (僕の他にも元カノさんが九条さんにピッタリくっついて…ううっ、今は僕の九条さんだもん!) ひとり元カノと戦う祐羽は、まだ寝ている九条の胸元へ収まって子犬の様な声を漏らす。 「九条さん…」 そんな自分を九条が薄目で面白そうに見ている事など知る由もない祐羽は、ショボッとした顔で二度寝に突入したのだった。

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