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怒涛の文化祭はトリオによって
十一月の晴れた朝。
文化祭にはうってつけの天気に、祐羽は朝からワクワクが止まらなかった。
「それじゃぁ行ってくるね」
学ランに身を包み手を振ると、着いて行きたがる父・亮介と笑顔の母・香織に見送られて元気に学校へと向かった。
電車に揺られながら昨日の事を思い出して祐羽は小さく溜め息をつく。
昨夜はちょっとだけ大変だったのだ。
祐羽の高校の文化祭は 土日の二日間行われる。
初日だった昨日は、保護者や地域の招待状を貰った人達だけの為に行われた。
両親も来てくれたのだが、亮介はオープンと同時に祐羽のカフェへやって来ていた。
そして指名で出てきた息子の入れたジュースをべた褒めしまくり、いくら市販の物だと言っても「祐羽の入れたジュースは特別ウマイ!愛情たっぷりだと味がやっぱり違うな!」と騒ぎ、お代わりしまくり。
それから高価なカメラで祐羽と共にただのジュースを激写。
香織に窘められて最後の一杯になると「祐羽が俺の為に丁寧に入れてくれたこのジュース。もったいなくて飲めない」と言って最後のひと口をチマチマと飲んでいた。
回転率をひとり落とすヤバめな父親に、クラスメイトの半分がドン引きしていたのをにぶちんな祐羽も感じていた。
「祐羽、また見に来るからな!」と台詞を残し渋々カフェを後にした亮介に、祐羽は来てくれた感謝とは別に嵐の様な時間が終わりを告げたことにホッとした。
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