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祐羽がさっそくオーダーの入ったジュースを用意して、ホール係に渡していく。
どうやら客の入りは順調の様だ。
「順調そうで良かったね」
隣に並んで作業をしていた鈴木が話しかけて来た。
祐羽を目の敵にしてくる鈴木と姓は同じでも名前はシズカで見た目も性格も正反対のクラスメイトだ。
クラスでは同じく大人しいチームの鈴木だが、自分の様に口下手だとか人見知りするタイプではない。
けれど優しい性格ということもあり、女子が苦手な祐羽でも普通に会話が出来る貴重な相手のひとりだ。
今も愛らしい笑顔を自分に向けてくれており、同じ鈴木は鈴木でも天敵である鈴木とは大違いだった。
『あの鈴木』も、この鈴木の様だったら…と願わずには居られない。
「月ヶ瀬くんのエプロン本当にいいよね。そのシリーズ私も好きで文房具とか持ってるよ」
オーダーが一旦ストップしていて手持ち無沙汰になった鈴木が、祐羽のエプロンへ視線を落として笑顔を見せた。
「えっ、そうなの?」
祐羽の驚いた顔に鈴木がコクリと頷いた。
昨日の時点でジュース係メンバーに「エプロン可愛い」と褒められて嬉しかったが、ここに新たな喜びが生まれる。
「わ~っ、嬉しい!鈴木さん仲間だね」
「うんうん、仲間だね!」
鈴木は頷きながら嬉しそうに頬っぺたを赤く染めて祐羽を見つめ返してきた。
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