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そんなつもりはない。 九条の代わりとはいえ、普通に大好きな仲良しの友達だ。 知り合って一年も経っていないし年齢差はあっても、まるで兄弟の様に本当に仲良しな間柄だから間違ってはいない。 ただ自慢の友達ではあるけれど、するつもりは全く無かったので、それは誤解だ。 (あっ、でも九条さんの事はちょっと自慢したかった気持ちがあった) 自分が以前妄想した事で今回バチが当たったのかもしれない。 「そうかも、きっと」 「は!?」 思わず頭の中の言葉が声に出てしまい、それに鈴木がドスの効いた低い声で反応した。 「あっ、違う!そんなつもりは、」 口を両手で押さえ慌てて否定するも聞く耳持たずの鈴木に思い切り睨まれる。 「今あんた認めた?もしかして。しかも何両手口に当てて可愛い子ぶってんのよ。男のクセにオドオドか弱い振りするのもムカつくんですけど」 怒られて口から手を離すが、怯える祐羽の様子が益々怒りのボルテージを上げてしまう。 正に蛇に睨まれた蛙になったところで救世主が登場した。 「おーい、忙しいホールの仕事サボって何してるのかな?」 そこへ最近聞くことの増えた男の落ち着いた声が割って入った。 「きゃっ!?」 驚いて声を上げる鈴木の向こうへ祐羽も誰だろうと視線を向けた。

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