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この重要な東京支部を任せる人間は誰がいいのかとなった時、隆成の兄かつ若頭の隆正 や執行三役が本部から離れるわけにいかず。
そこで息子で信頼が出来、若頭補佐である隆成に白羽の矢が立ったのだった。
若頭補佐は他にも数名おり皆それぞれ優秀ではあったが、ひとつ隆成が抜けているのは事実だった。
四十前とかなり若いが、度胸と腕っぷしは文句なく、一見チャラチャラしているようでいて芯はしっかり一本通っており頭の回転もいい。
加えて極道の世界で一目置かれる存在の九条とは従兄弟同士で仲も良い―となれば適任である。
こうして若頭補佐と兼任で紫藤組東京支部の組長代理としてやって来たのだった。
けれど元来細かいことが苦手なので、面倒臭いの連呼である。
「俺だけでなく部下に迷惑かけんな」
そう言って九条に視線を向けられた城崎は一瞬困惑の表情を見せたがそこは紫藤の舎弟、気づかない振りで任されている作業を続ける。
「誰が迷惑かけてるって?」
「コーヒーどうぞ」
紫藤が睨んだタイミングで眞山が部下から受け取った淹れたてのコーヒーを置いた。
単純な男は「休憩するか~」とご機嫌でカップを手にした。
休憩休憩って何度目の休憩だとツッコミを入れたい気持ちを周囲に与える男、紫藤。
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