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渋谷の明るい声で我に返った祐羽は、優しい先輩達を睨んだことを後悔した。
(僕が下手くそなのは本当なのに。それに、先輩達は本気じゃなくて盛り上げる為に言ったのに。僕…なんてダメ人間なんだろう)
そんな唇を噛んで俯く祐羽に宇佐美達は大慌てで「月ヶ瀬!」「ゴメン!冗談でも言いすぎた」と弁解してきた。
特別可愛い後輩を悲しませる為に言った言葉ではないのだが、結果そういう気持ちにさせてしまったことに部員達は祐羽以上に反省した。
皆に囲まれて謝罪されたことで余計に祐羽は申し訳なくなって何も言えない。
そんな様子を見守っていた外崎と目配せした中瀬が祐羽に耳打ちする。
「お互いに言いすぎた事に気がついたんだから、これが本当の『おあいこ』ってヤツだぞ」
祐羽が思わず中瀬を見ると、今度は外崎が
「今度こそ相手の気持ちに立って気をつけること。それができたら良いんだよ」と言った。
それには、その場に居た全員が視線を向けた。
「そうですね。気をつけます」
「僕も気をつけます。…言いすぎてごめんなさい」
宇佐美の言葉に祐羽も素直に部員達に謝った。
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