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外崎が首を傾げ不思議そうにしていると目の前まで来た中瀬が隣へと視線を向け「ひとりだと心配なんで付き添い頼みました。バスケ部の店前で呼び込みしてた渋谷君です」と紹介した。
「なんか分からないけど、付き添いです」
「えっ、大丈夫なのに!僕、子どもじゃないよ」
「大人なのは知ってます。知っていますけど、祐羽と大差ないんで」
「うっ。否定できないけど…中瀬君、時々厳しい」
中瀬の台詞に外崎が眉を垂らして泣きそうな顔になる。
「じゃぁ頼むな」
「余裕っス。役得役得」
渋谷は外崎の横に経つと笑顔でピースサインをすると、さっそく絡み始める。
「えーっと、外崎さんでしたっけ?ここは軽い気持ちで待ってましょうよ?俺、祐羽の先輩でよく世話してます。だから結構色々知ってますよ。ってことで、外崎さんの事も知りたいんですけど」
渋谷が初対面の年上相手とは思えない、どこか軽い口調で話を始める。
「え?」
「俺と話するの嫌ですか?」
「嫌じゃないけど…」
そんな二人のやり取りに、クズ男にナンパされているかのような構図に―頼んだ相手を間違えたか?―と一抹の不安が過った。
しかし、祐羽から名前と話はよく聞いていたのでイケメンでチャラそうな見た目とは違い大丈夫なはずだ。
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