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「よし。じゃぁ、こっちへ来な!カモン生け贄!!」
「生け贄じゃな――って(誰?!)」
気がつかなかったが、隣にはもうひとり居たようだ。
かなり体格の良い男子生徒が居たのに、ローブ姿の生徒と人形のインパクトが強すぎて全く気がつかなかった。
その男子生徒は茶色い髪のなかなかのイケメンだがチャラチャラした感じ―なのに、賢者なコスプレ姿なので明らかに浮いていた。
おまけに衣装は安いサテン生地で出来ているせいかテロテロしていて目の前の水晶玉が説得力に欠ける。
「おいっ、人の話を聞け。俺のコスプレに見惚れるのも分からんでもないがな…一応プロを目指している。つっても占い師の方な」
「プロね…」
そのセリフに隣のローブの男が溜め息をついた。
「また溜め息をついたな。悪魔に付け入られるぞ、小悪魔リンリン」
「リンリン言うな!凛太郎《りんたろう》だ!!このゴリラ!!それに小悪魔って何だ!?」
「ゴリラじゃねぇよ、こんなイケメン捕まえときながらリンリンは」
心底困ったといった風にやれやれと溜め息の男子に、凛太郎と呼ばれた生徒は益々ご立腹の様子だ。
「リンリンじゃなくて、凛、太、郎!」
「一緒だろ?呼びやすいしリンリンでいいだろうよ」
「このゴリラ湊《みなと》!全然良くないわーっ!!」
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