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祐羽は小さく深呼吸をすると、音を立てない様にと近づいていった。
少し遠くからは校内に流れる音楽や放送、人のざわめきが聞こえてくる。
それが別の世界の事の様に思えてきて、祐羽は一瞬足を止めて後ろを振り返った。
誰も居なくて急に怖くなって来たけれど、ここまで来て引き返せない。
(あとちょっとだし。確認するだけだもん)
普段ならこんなことはしないけれど、何故か気になって仕方ない。
確認しなければこのソワソワした気持ちは収まりそうもなく、祐羽は慎重に歩を進めた。
学校の敷地内で見かけた爽やかで優しい教師の後を追うだけの事に、何も問題は無い。
例えば浅尾がタバコを吸っていたり、迷子の子猫の世話をしていたりしても口外する事は絶対に無い。
ただ気になるだけなのだ。
とうとう見える位置までやって来た祐羽は、建物の陰からソーッと目を覗かせてみた。
(あれ?居ない)
しかし、そこに浅尾の姿は無く祐羽は狐につままれた様にポカンとした。
(どこに行ったんだろう?)
そこは秋らしく色づいた木々の繁った静かな裏庭しかない。
チョロリと裏庭に出た祐羽は首を傾げながら左右を見回した。
「うーん。おかしいなぁ」
「何がおかしいの?」
「うわぁっ?!」
突然真後ろから声がして、祐羽は突然の事に驚きから飛び上がった。
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