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「なぜコイツをここへ連れて来た」
顔を車の外へと向けて九条は低い声を出した。
「九条、さん?」
顔を見上げながら呼び掛けると、九条が漸く自分の方へと顔を向けてくれる。
「あぁっ、九条さんだ!良かったーっ」
その顔を見て間違いなく九条だと確信すると、大きな安堵の息を吐いて太ももに頬を預けた。
その頭をよしよし撫でられて一気に身体中の力が抜けていく。
「僕、誘拐されたのかと思いました」
そこでハッとした祐羽は体を起こすと窓の外へと顔を向けた。
浅尾に突然襲われたのだ。
「大空《そら》。会長に用があると言ってきたのは何だったんだ?それにこんな所へ月ヶ瀬君を連れて来て。怖がっているだろう?」
確かに物凄く怖かった。
しかし今は安全だと分かりすっかり大丈夫なのだが、一体どういうつもりで浅尾はこんなことをしたのだろうか。
そんな祐羽の疑問は眞山が浅尾へと投げ掛けてくれた。
「会長のパートナー学校で見ててもどんくさくて、広島みたいにまーた誘拐でもされたら困ると思ってたら案の定。俺の後を人気の無い所へノコノコで着いて来るもんだから、お灸を据えてやろうかと」
浅尾は意地悪な顔でニマッと笑った。
その顔は普段学校で見る浅尾とは全然違い、少し小馬鹿にされているようにも感じる。
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