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「…」 祐羽の表情の変化に気づいた九条は声を掛けたが、恋人からの返事はない。 聞こえるのは微かな寝息だけだ。 これで何度目だろうか、セックスになるとすぐにコレだ。 快楽と睡魔に弱すぎる恋人に内心頭を抱える。 九条も四十手前で祐羽からすればおじさんかもしれないが、とはいえまだ若く性欲も全く衰えてはいない。 本気になれば子沢山な家庭を築けるくらいには精力はある。 以前なら女を相手に定期的に発散させていたが、後腐れないと思っていても相手は違うらしい。 だから誰か適当に見繕うといっても難しい上に、何より今は祐羽がいる。 黙ってどこかで女を抱いても鈍い祐羽は気がつかないだろう。 しかし今の九条は、目の前で裸の美女が股を開いて誘ってきたとしても全く食指が動かない自信がある。 性欲はあっても今や祐羽にしか働かないのだから、責任をとって貰いたいものだ。 視線の先で上下に動くプニッとした腹を見下ろせば、夕飯を食べて満足そうに「お腹いっぱい」と叩いて見せた様子を思い出す。 九条は小さく息を吐くと、それからベッドを降りて浴室へと向かう。 そして濡らしたタオルを手に、祐羽の元へと戻ると丁寧に拭いてやる九条。 しかし翌朝。 案の定、九条にお預けさせた記憶をサッパリ無くしている呑気な祐羽なのであった。

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