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同情
自分が逃げれば契約を破ることになる。
そうすると、家族に迷惑をかけることになるだろう。
一体どんな仕打ちが待ち受けているのかを思うと、怖くてドアを開けてこの場を飛び出す勇気は出なかった。
室内にはレースやリボンの付いたキャミソールを着ている女たちが、数名ソファに座っている。
どの女も薄い布から胸元を大胆に主張しており、ショーツが見えるか見えないか。
太腿もスラリと露にしていた。
「…ぁ、う…」
注目を浴びて動揺する祐羽は、室内の女たちから視線を外す。
目のやり場に困ってしまう。
幼いとはいえ、祐羽も男だ。
若い女の性的魅力に、恥ずかしさを沸き上がらせる。
「きゃ~‼可愛い‼」
顔を赤くする祐羽に、女たちが一斉に声を上げた。
「こっちにおいでよ‼」
側に座っていた女に手を引かれ、体勢を崩しながらソファに座る。
両隣に裸に近い女が居ることで、祐羽はモジモジしてしまう。
「ねぇ、どうしてここに連れてこられたの?」
「キミさ~男の子だよね?」
すると、声を潜めてめのまえの女が顔を近づけてこう言った。
「この店、あんまり良くないよ~?元締め質の悪いヤクザなんだよ」
それは言われなくとも分かっている。
そのヤクザな男に連れてこられたのだから。
「あの…っ‼お姉さんたちも、無理矢理連れてこられたんですか?」
祐羽が訊ねると、女たちが顔を見合わせた。
「もしかしてキミ、無理矢理?」
祐羽がコクリと頷くと、女たちに同情の空気が流れた。
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