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act.1 Honey Kiss 〜 the 4th day 2 ※

どこかに寄る気にもなれず、高速道路を駆け抜けて帰路につく。車内には重苦しい沈黙が降りていた。 家に帰り着くと、夜はすっかり更けていた。 「ごはん作るね」 そう言うアスカに、俺は首を横に振る。 「いいよ、あんまりお腹空いてないんだ」 「何か食べないと」 アスカは俺をじっと見て、ぽつりと言葉をこぼした。 「ハルキさん、まだ引き摺ってるんだね」 そう言ってこちらに近づきながら、軽く溜息をつく。 ああ、俺ってほんと、女々しいな。 俺はアスカと並んでソファに腰掛けて、ぼんやりと考える。 俺は美希が好きだ。厳密には好きというのは、ちょっと違うのかもしれない。美希は、いわば俺の帰る場所みたいなものだった。美希がいたから、俺はあちこちに行っても戻って来ることができた。だから、美希がいない俺は糸の切れた凧のようにおぼつかなく不安なんだろう。 「ねえ、これ」 アスカが、小さな容器を俺に見せる。未開封の、透明なグロス。 「美希さん、なんでこれだけ置いて行ったんだろう」 「これ、うちの会社の試作品なんだ」 俺は「HONEY LIP」と書かれたパッケージを開封する。 「普通のグロスって塗るとベタベタするんだけど、このグロスはすごく粘度が緩くてトロトロしてる。でも唇にちゃんと密着するんだ。しかも、舐めると味がする。これは蜂蜜味」 「本当だ。いい匂い」 グロスに顔を近づけて目を閉じるアスカに、俺はどぎまぎする。 「俺、これを付けた美希とキスするのが好きだったんだ」 「……なんか、いやらしいね」 「だからこそ美希は、これを置いて行ったんだろ」 アスカが俺の手からグロスを取った。とろりとしたそれを、自分の唇にゆっくりと塗っていく。艶やかな光を纏い、唇は淫靡に俺を誘う。 動揺する俺の首に、アスカの腕が回る。甘い匂いが鼻をくすぐった。 「最後の儀式だ、ハルキさん」 唇が重なる。柔らかな唇を舐めると、蜂蜜の味が広がる。美希の味だった。 理性の箍が完全に外れた。唇を貪れば熱っぽい吐息が絡まる。俺が挿し込んだ舌をアスカが吸う。与えた蜜を味わうように、丹念に。 唇を離して喉元に口づける。そのまま胸元に降りていくと、今まで俺を散々惑わしてきたあの甘い匂いがした。 「ハルキさん……」 熱に浮かされたその声は掠れている。アスカが着るシャツのボタンに手を掛けると、上目遣いに俺を見つめてきた。 「向こうに、行こう……」 俺たちは何度もキスをしながら寝室へと歩いて行った。 美希としか愛し合ったことのないベッドの上で、俺はアスカのシャツを脱がせる。甘い匂いがふわりと漂う。女とは違う肉づきの薄い身体には、無駄な部分がなかった。 俺のシャツを捲り上げて脱がせようとするアスカの手に手を重ねる。 「アスカ、自分でするよ」 きれいな微笑みが俺を魅了する。アスカが男だとか、そういう観念は完全に吹き飛んでしまっていた。 服を全て脱げば、俺のものは既に硬く勃ち上がっていた。アスカがそこに手をかけて動かすと、身震いするような快楽が襲う。 「アスカ……俺はいいよ」 俺は細い手首を取って口づける。 アスカの下半身に触れるとそこはまだ完全には勃っていなかった。握りしめたそれをゆっくりと扱いていけば徐々に硬く張り詰めて、アスカは恍惚とした表情を浮かべる。 「あ……ハル、キ……さ……、あァ…ッ」 アスカの息が乱れてくる。俺はキスをしながら夢中で手を動かしていく。 「や……、も、出る……ッ」 上擦る声は、あまりにも官能的だった。 「あぁ……アッ、あ……ッ!」 俺はアスカの精を掌で受け止める。欲望を吐き出して肩で息をするアスカは、この上なくきれいだった。 手をティッシュで拭いながら、しどけなく横たわるアスカに口づける。 「ハルキさん、挿れたい……?」 官能的な囁きに俺はほんの一瞬たじろぐ。女とは数え切れないぐらいセックスしてきた俺も、さすがに男との経験はなかった。それでも俺は、目の前のアスカに最高に欲情してる。 「挿れたいよ」 アスカは小さく頷き、起き上がってベッドに転がっていたグロスを手に取った。ソファから持ってきていたんだろう。 「これ、使っていい?」 アスカはグロスをゆっくりと指に落とした。甘い香りが広がる。 「ごめん。準備するね……」 その小さな蕾に指を入れようとするアスカを、俺は慌てて抱きしめる。 「バカだな。俺がするよ」 アスカは頬を赤らめる。その表情が色っぽくて堪らない。アスカがしていたのと同じように、自分の指にグロスを塗っていく。 俺は死ぬほど聞きたかった。 ――アスカ、いつもこんなことしてんのか? 後ろの小さな蕾に触れると、アスカは僅かに身じろいだ。 「アスカの気持ちいいところ、教えろよ」 そう言うと恥ずかしそうに頷く。人差し指をゆっくりと沈めていくと、アスカは目を閉じて息を吐いた。 アスカの中は、熱を持ちながら指に吸いついてくる。指をそっと動かすと、唇から喘ぎ声が漏れた。 「……あ……ッ、あぁ……」 その顔があまりに気持ち良さそうで、俺は嫉妬する。アスカにセックスを教えた見知らぬ『サキ』に。 奥の方をまさぐると、ある場所でアスカの身体が跳ね上がった。 「あァッ……ハルキさん、そこ……ッ」 その一点を集中して攻めていくと、アスカは俺にしがみついてくる。 そうだ、しっかり掴まっとけよ。俺が連れてってやるから。 「あァ…ッ、ハル、キ…さん……ッ、も…イきそ……ッ」 懇願するように俺を見るアスカに口づける。俺はアスカをてっぺんまで引きずり上げる。 「ああァ、ああ、あァ……ッ!」 ヒクヒクと、アスカの中が痙攣し続ける。射精はしていない。後ろだけでイったんだろう。

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