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act.4 Lost-time Kiss 〜 the 2nd day 3

手掛かりを掴んだのは、飛鳥の行方を求めてネットを検索していたことがきっかけだった。 偶然、あるサイトの掲示板を開いたときだ。 『アスカ』 視界に飛び込んできた三文字に、俺の目は釘付けになる。 あるバーで4日間だけ契約できる、若く美しい男の名前。 年齢、背格好、風貌。俺の知っている飛鳥と合致している。 『アスカの身体からは、甘い匂いがする』 『いろんな男と寝ては虜にして去って行く』 読み進めるうちに、居ても立ってもいられなくなった。あの飛鳥が多くの男に抱かれている。憤りに近い嫉妬に駆られて吐き気がした。 ようやく飛鳥を見つけたかもしれないという喜びと、飛鳥がそんなことをするわけがないという疑念が、交互に押し寄せる。 サイトの書き込みの中で、契約の間にアスカの写真を撮ったという男を見つけた。俺は事情を説明して、その写真をメールで送信してもらう。 一糸纏わぬ姿でベッドに横たわり眠る、天使のように美しい人。 間違いなく、俺の知る飛鳥だった。 晩ごはんを食べ終えて、アスカが皿を洗っている間に俺は風呂掃除をして湯を張る。 「そんなの、僕がするのに」 「いいよ。俺、風呂掃除が好きなんだ」 適当なことを言うと、アスカが顔を綻ばせる。その笑顔は屈託がなくて本当にかわいかった。 「僕、ミツキの後で入るね。その方がいいから」 「好きにすればいいよ」 俺の顔をそっと窺ってくるのに、目が合った途端視線を逸らされてしまう。アスカは何かを迷っているように見えた。 風呂から上がってきたアスカはほんのりと頬が上気していて、匂い立つような色香を漂わせる。 ようやくゆっくり話せる時間ができたことで、俺は緊張していた。 この2日間は、会っていなかった時間を埋めるためのリハビリ期間だったのかもしれない。歩がいなかったらきっと、俺は我慢できずにアスカに自分の気持ちをぶつけてしまっていた。 アスカとの付き合いは決して長くはなかったけど、それでも俺は気づいていた。アスカは人付き合いに一定の距離を置くことに慣れてしまっている。だから、こちらの気持ちをきちんと伝えた上で、アスカの方から歩み寄ってくるのを待たなければいけない。 「こっちに来て座れよ」 そう誘えば、アスカはベッドへと歩み寄ってきて、少し距離を空けて俺の隣に腰掛けた。 「アスカ。この一年の間に、何があったんだ」 答えは返ってこない。まだ心を閉ざされていることが、淋しかった。 「なあ。どうしてこんなことをしてるのか、教えてくれ」 口調が次第に強くなっていることに気づいて、慌てて押し黙る。俺が焦れば、きっとアスカはこの掌から擦り抜けてしまう。 「悪かったって思ってるんだ。あの時、アスカを突き放したこと」 必死に縋りついてきたあの時に俺がしっかりと受け入れてやれば、アスカは逃げ出すように姿を消すこともなく、もっと楽に生きていけたのかもしれない。 「ミツキは悪くないよ。悪いのは全部僕だ。それに」 視線を落とした瞳が泣きそうに揺らいだ。 「同情で抱かれたって、何も変わらなかった」 「アスカが好きだ」 真っ直ぐに向かい合ってそう言えば、アスカは目を見開いて顔を上げた。やっと口にできた想いは、堰を切ったように溢れていく。 「きっと最初からずっと好きだった。アスカが俺のことなんて見てないことはわかってたから、必死に自分の気持ちに気づかない振りをしてた。でも、そのせいで俺を頼ろうとしたアスカを振り払ってしまった。アスカがいなくなって、自分がしたことをすごく後悔したよ」 差し伸ばして触れた手を強く握りしめれば、アスカは潤んだ瞳で喰い入るように見つめてくる。 「ずっと捜してたんだ。やっと見つけた。もう、離したくない」 「ミツキ。一度そうなったら、戻れないよ……」 戻れない。もう、友達には。 アスカ、そんな言い方はずるい。あの時、最初にこのラインを超えてきたのはお前じゃないか。 「もう、とっくに戻れないんだ」 俺はアスカを抱き寄せる。両腕を回せばその身体は見た目よりもずっと華奢だった。花のような匂いが鼻腔に届く。 「アスカ、一緒にいてくれ。俺にはお前が必要なんだ」 「必要……?」 腕の中でアスカが僅かに身じろいだ。肩を掴んで一旦離し、至近距離で見つめ合う。心臓が爆発しそうなぐらいに大きな音を立てていた。 「そうだ。この一年、自分の中にぽっかり穴が空いたみたいで、毎日アスカのことばかり考えてた。会いたくて堪らなくて捜し続けて、やっと見つけた。お前がいないと駄目なんだ」 真っ直ぐに俺を見つめる美しい瞳の中に、ずっと映っていたいと思った。 「今すぐ決めなくていい。この4日間が終わるまで、俺と一緒に過ごしながら考えてほしいんだ」 困惑した顔で、それでもこくりと頷くアスカに俺は少し安堵する。 「俺、アスカが好きで好きで仕方ないんだ。アスカ、大好きだ」 視線を交じらせながら長い間ずっと溜め込んでいた想いを口にをすれば、アスカは頬を染めて俯く。 「ミツキ……」 その照れたような様子がかわいくて、堪らず口づける。唇が触れ合った途端、痺れるように下肢が疼いた。舌を挿し込めばアスカは容易く俺を受け容れる。 「……ん……っ」 絡み取った舌を吸って舌先で擽れば、唇の隙間から吐息が漏れた。 「抱いてもいいか」 焦ってはいけないという気持ちとは裏腹に、俺はそんなことを口走っていた。 細い腕が俺の首に回った。濡れたように光る瞳が情欲を掻き立てる。 「いいよ。抱いて……」

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