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act.4 Lost-time Kiss 〜 the 4th day 3 ※

ゆっくりと腰を動かせば、アスカは頬を上気させて甘く喘ぐ。繋がる部分はぐずぐずと焦れるように疼いて、熱の滾るままに中を穿っていく。 奥の方を揺さぶるように突くと、上擦った声がこぼれ落ちた。 「あ……ッ、んっ、あ、ミツキ……ッ」 伸ばされた腕を取ってしっかりと抱きしめる。見つめ合えば、瞳は何かを訴えかけるように小刻みに震えていた。 揺らめくその眼差しを逸らさずに受け止めて口づける。舌を絡ませる度に身体の内側に蕩けるような熱が生まれてくる。 行ったことのない深い場所へと、アスカは俺を引き摺り込んでいく。誰もいないこの世界にこのまま二人で融けてしまいたいと思った。 「アスカ、愛してる……」 愛の言葉を繰り返す度にアスカの瞳が潤みを帯びていく。だから、身体は満たされていてもひどくおぼつかない気持ちになる。 その不安を少しでも拭いたくて、紡ぎ合う快楽の中で美しいカーブを描く頬に触れる。 「身体だけじゃなくて、心も抱きたいんだ」 ふわりと花開くような微笑みを浮かべて、アスカは俺に抱きついたまま少し身体を起こした。頬を伝うのは、清らかな光を纏う涙。 「もう、ミツキでいっぱいだよ。すごく幸せ……」 その語尾は今にも消え入りそうなほど儚げに震える。 だったら、どうしてそんなに辛そうな顔で泣くんだ。 俺は堪らずアスカをし強く抱きしめた。 「アスカ……しっかり掴まってろよ」 アスカの流す涙が振り切れるように律動を速めると、悲鳴のような声が耳元で聞こえた。 荒い呼吸、甘い喘ぎ、ベッドの軋む音。愛おしい音の入り混じる空間で、この熱が硬く閉ざされた心に届くことを願いながら、俺は最奥への抽送を繰り返す。 生殖を伴わないこの行為が、俺がアスカと繋がる唯一の手段なのだとすれば、それはなんて脆く不確かな関係なのだろう。 「ミツ、キ……ッ、ん、あ……っ、あぁッ」 限界はすぐそこまで押し寄せていた。背中に回された腕に力が篭って、アスカの中がうねりながら俺を取り込んでいく。 押し寄せてくる快楽の兆しは怖いぐらいに大きかった。俺はきっとアスカとしか行けない場所に辿り着ける。 ずっと身体を繋げることはできない。だからこそ、束の間でもひとつになって同じ景色を見たいんだ。俺はもうアスカしか愛せないから。 「愛してるよ、アスカ」 耳元で囁けば、アスカは俺を自分の中へと引き込むように一層強く締めつけた。 「ミツキ、ミツキ……ッ、あ、ああ……ッ!」 抱きしめた身体の奥深くに、俺は昂ぶる熱の全てを放つ。その瞬間、俺はアスカの中に融けていて、確かに二人がひとつになるのを感じた。 荒く息をつきながら、力の抜けた身体を押しつけるようにアスカが抱きついてくる。密着した肌を伝う心音がどちらのものかの区別さえつかない。 「ミツキ……」 俺の名を呼んだ後、アスカは耳元で微かに息を吐いた。それが聞き逃してはいけない囁きだったような気がして、俺は顔を離して訊き返す。 「アスカ、何?」 「──なんでもない」 かぶりを振って、アスカは俺にしがみついてくる。 「抜かないで。もう少しこのままでいたい……」 甘えてキスをせがむから、ドロドロに融け合った身体を持て余しながら口づけを交わす。快楽の余韻を引き摺ったまま、アスカはうっすらと目を開けて蕩ける眼差しをひたむきに俺に注ぎ込む。 「愛してる」 キスの合間に何度もそう告げれば、その度にアスカの中が反応して優しく俺を締めつけた。 「まだ足りない?」 火照る頬に掌をあてて、濡れた桜色の唇に親指で触れながらそう尋ねると、アスカは美しく煌めく瞳に俺を映し出す。 「足りなくないよ。ミツキの言葉が、気持ちいいんだ」 今にも消えてしまいそうに儚いその笑顔が、本当にきれいだった。 ずっとこうしていたい。全てを受け入れて、今度こそこの手を離さない。アスカを愛してるから。 ──なのに。 「ミツキ。もう、さよならだ」 きれいな形をした唇からこぼれるのは、残酷な別れの言葉。

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