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act.0 Sanctuary Kiss side A 〜 the 3rd day 6 ※
何度も名前を呼びながらうっすらと目を開ければ、沙生がいつの間にか起き上がって僕をじっと見つめていた。
艶めく瞳に滾るのは、紛れもない情欲の光。
『飛鳥……』
沙生が手を伸ばして僕のものに触れる。それだけで、僕の中は咥え込んだ指をギュッと締めつけた。
卑猥な蜜に濡れた熱い昂ぶりを、沙生がそっと扱いていく。
『あ、沙生、ダメ……ッ』
ぞわぞわと一気に下肢が痺れてしまって、その強い感覚に思わず指を引き抜こうとすると沙生が首を振った。
『飛鳥、そのまま動かして』
耳元で囁かれる甘い声に、僕は素直に従うしかない。
『さ、き……ッ、あっ』
折り重なる濡れた音が、僕の聴覚を犯していく。
沙生の手の動きに合わせて掻き回すうちに、中は熱を孕みながらぐずぐずに融けて柔らかくなる。やがて僕の中でせめぎ合っていた感覚は大きな波に呑まれ、悦びに震えながら果てた。
「……あ、あっ、イく、あぁ……」
溜まっていたものが吐き出される度に、強張る身体が小さく跳ねて弛緩していく。
快楽の余韻は、長く緩やかに続く。堪らなく気持ちいい。まるで沙生にしてもらったみたいに身体が反応しているのがわかった。
「んっ、あ……」
指を引き抜けばその喪失感がつらくて、上擦った声がこぼれた。ぼんやりとした意識が少しずつ戻ってきて、沙生の手の中に白濁を放ってしまったことに気づく。
目を開けた途端、沙生がその手を舐めているのが見えた。
『沙生……っ』
恥ずかしくて手を掴もうとすると、沙生は唇を濡らしながら僕の顔を覗き込んで優しい微笑みを浮かべる。
『飛鳥を味わいたいんだ』
沙生があまりにもきれいな顔でそんなことを言うから、僕は引き寄せられるようにその唇にキスをする。柔らかな弾力の唇を食んで、挿し込まれた舌に吸いつくように絡ませる。
何度も角度を変えて口づけながら、僕は沙生をそっと押し倒した。
『じっとしてて』
沙生のものに両手で丁寧にローションを塗っていく。そこは熱を持ちながら硬く勃ち上がっていた。
『挿れるね……』
仰向けに横たわる沙生の上に跨がり、疼く後孔にその先端をあてがって、ゆっくりと腰を落としていく。
『あ、あ……ァっ』
沙生を半分ほど咥え込んだところで、僕の中は意志とは関係なく小刻みに震えて軽く果てた。
荒い呼吸を繰り返しながら、逸る気持ちを抑えてまた深く沈めていく。
『沙生……』
最奥まで到達した。そっと身体を前に倒し、すぐにでも動きたい衝動を必死に抑え込んで、沙生の胸にぺたりと頭を預けた。
『飛鳥の中、熱い……』
沙生が吐息混じりにそう言うから、僕は嬉しくて堪らない。
『沙生もすごく熱いよ』
僕の体内に沙生の形が緩やかに刻み込まれていく。
沙生の胸からは、とくとくと強い鼓動が伝わる。この心臓は、そう遠くないうちに止まってしまう。それはきっと悪い冗談に決まっていた。
温かな胸に耳を付けてじっとしていると、このまま緩やかに融けて混ざり合い、沙生の中に入り込める気がした。
沙生とひとつになりたい。身体だけではなく、心も。
『沙生、愛してる』
言葉にすれば、また愛おしさが増してくる。
『愛してる』
僕の全てを支配するほどに強いこの想いは、どうすれば沙生に届くのだろうか。
『愛してる……』
重ね合う身体がわずかに震えて、思わず顔を上げる。沙生が泣いていた。
『沙生』
僕は驚いて声をあげる。クリスタルガラスのように輝く鳶色の瞳が、ゆらゆらと揺れている。沙生が初めて僕に見せる涙は、あまりにも清らかで美しかった。
『沙生、泣かないで』
きれいな雫が溢れて目尻から伝い落ち、僕は手を伸ばして指先でその光の輝きを拭う。
ああ、この涙は沙生の生命のようだ。
宝石のように煌めく粒を必死に掬おうとするのに。次から次へとこぼれてしまう。
『飛鳥』
きれいな形の唇が、僕の名を紡ぐ。
神様に愛されてしまったばかりに、こんなにも早く天に召されてようとしている、美しい沙生。
『愛してる』
何度も言われてきた言葉が、今は砂漠に落ちたひとしずくの水のように、僕の胸の中に染み込んでいく。
『飛鳥の澄んだ瞳が好きだ』
僕は鳶色の瞳を覗き込みながら頷く。胸の奥から熱いものがとめどなく込み上げてきて、それを食い止めるために必死に息を詰める。
『飛鳥の顔も身体も、心も。何もかもがきれいで、大好きだ』
泣いてはいけないと思うのに、視界が滲んでしまう。
『この花のような甘い匂いも』
神様、お願いだ。他には何もいらない。
『飛鳥の全てを、愛してる』
だからどうか、この人を連れて行かないで。
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