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act.6 Platinum Kiss 〜 the 3rd day 11 ※
荒い呼吸を繰り返しながら、アスカは俺の隣で戒めを解くように前を寛げて、勃ち上がったものを取り出していた。
そのまま急き立てられるように自らの手をそこに掛ける。
「あ……っ、あぁ……」
扱く手の動きに合わせて、喘ぎ声がこぼれ落ちた。アスカは欲に溺れ切った顔をこちらへと向け、俺を見つめてねだってくる。
「カズミさん……、触って……」
濡れた瞳から放たれる強い光が、俺の理性をみるみる壊していく。
左手をステアリングから外して、物欲しげにヒクつくそれを握り込んだ。
蕩けそうな熱さを孕んだアスカの半身は、今にも弾けそうなほどに硬く張り詰めていた。
「……ん、ん……あッ」
軽く扱いただけで、恍惚とした表情で喘ぎ声を漏らして快楽を訴えてくる。
力を入れ過ぎないように握り込んで緩やかなリズムで上下に動かしていけば、乱れた呼吸に上擦った声が混じっていく。
「あ、……も、出る……、あぁ……ッ」
震える先端からゆっくりと白濁がこぼれる。断続的に吐き出される欲は、ほんのわずかな量しかない。
肩で息をしながら弛緩した身体をぐったりとシートに預けるその姿は、手負いの獣そのものだった。朽ち果てる寸前まで傷ついて、それでもなお目を奪うほどに美しい。
「帰るまで、もつか」
俺の言葉に、ぼんやりとした顔でアスカは力なく頷く。
何度も果てたはずの半身は、濡れて光を帯びながら再びゆっくりと頭をもたげ初めていた。
その艶かしさに、俺は自分の身体が震えるのを自覚する。
マンションの駐車場に車をとめて、アスカを抱え込みながらエントランスを抜けてエレベーターに乗り込む。
腕の中の身体は燃えるように熱く、汗でじっとりと湿っていた。最上階までの距離が、いつもより長く感じられる。
鍵を開けて玄関に上がり込んだ途端、アスカが我慢の限界を訴えるように俺の顔を見上げてきた。
「カズミさん……」
泣き出しそうに潤んだ瞳に俺を映しながら、首に腕を絡ませて縋るように抱きついてきた。合わさる唇から、ぬるりと舌が侵入してくる。
「……ん、……ッ」
口腔を弄る滑らかな舌の動きに応えながら、縺れ合うように寝室へと転がり込んだ。
ベッドの上で身体を反転させたアスカは、俺の上に馬乗りになって布越しに半身に触れる。反応していることを確かめているのだろう。
俺を見下ろす美しい瞳は、滾る情欲に濡れていた。
慣れた手つきでベルトのバックルを外して、腹につきそうなほどにそそり勃つ俺のものを取り出したかと思えば、顔を近づけて躊躇いもなく咥えていく。
性急な行為のわりに丁寧な愛撫だった。めくるめく眩暈のような快楽が、這いずるように身体中を廻っていく。
下肢から響く卑猥な水音が、聴覚を刺激して快感を助長させる。
「……もういいよ、アスカ」
さらりとした髪にそっと手を伸ばして梳いていると、アスカは上目遣いでこちらを見て、ゆっくりと目を細める。獲物を捕らえる眼差しは、俺の全てをいとも容易く絡め取っていく。
その腕を掴んで手繰り寄せるように起き上がり、アスカが身につけているものを全て脱がせてしまう。こんな切羽詰まった状況だというのに、妙に嬉しそうな微笑みを向けてきた。
「カズミさんも、脱いで……」
アスカの熱が移ったかのように、俺の身体は内側から火照っていた。
期待に満ちた瞳で、アスカは俺が全裸になるのを大人しく待っている。お預けを喰らった仔猫のようだ。その様子がかわいくて思わず笑みをこぼすと、アスカは我慢できなくなったかのように唇を寄せてきた。
湧き起こる熱に情欲が融け出してくるような、甘美な口づけだ。舌を挿し込み絡ませていると、体重を掛けられて押し倒された。
唇を離したアスカは恍惚とした表情で片手を伸ばし、愛おしむような優しい手つきで俺の昂ぶりをゆるりと扱く。
何度か手を動かしてから、腰を浮かせて先端を後孔にあてがったかと思えば、性急に中へと沈めていった。
「ん、んっ、あぁ……ッ!」
強い収縮が俺の半身を刺激する。吐精したい欲求を堪えながら、仰け反る背中を支えるために手をあてて、こちらに抱き寄せた。
達した後の熱を持て余すように速く短い呼吸を繰り返しながら、アスカは俺の胸に持たれ掛かってくる。
解してもいないのに、俺を包み込むその中はドロドロに蕩け切っていた。あの男の放った欲が、そのまま残っているのだろう。
途端に胸に湧き起こる苛立ちを何とか押し殺そうと息を吐く。
熱く火照る身体を抱き締めながら強く突き上げれば、アスカは艶やかに喘いで応えてくる。
「あっ……ああ、いいよ……」
飽くことのない快楽を求めて、アスカは軽快に腰を揺らして身体を弾ませる。
しなやかな肢体が跳ね上がる度に、ベッドのスプリングが規則的に軋んで苦しげな悲鳴をあげた。
「カズミさ……、もっと……ッ、あ、ぁ」
アスカは掠れた声でねだりながら、少しだけ上体を起こして俺を見つめる。
これほど近くにいるのに遙か遠くを見つめる、泣きそうに潤んだ眼差し。わずかに少年のあどけなさを残す、天使のカーブを描く頬。濡れて光を反射する、艶やかな桜色の唇。
理性を残らず投げ出してただ身を委ねてくるアスカは、こんなにも淫らで美しい。
「──ねえ、もっと」
先程まで盗聴していた声が、今は電波に乗らない生身の音として俺の鼓膜を震わせる。
アスカは徒らな快楽だけを求めているのではなかった。きれいな形の唇から花弁のようにこぼれるのは──。
「壊して……」
破滅への強い羨望だ。
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