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Stigmatic Kiss side A 5 ※

そっと口から引き抜きながら、最後の一滴までを搾り取るように先端を吸い上げる。 身体を起こしてから幾度かに分けて口の中のものを嚥下すれば、特有のにおいが鼻に抜けていく。この独特の苦味が、僕は嫌いではなかった。 セックスは他者と自分の境目を融かす行為だ。こうして身体から放たれたものを僕の中に入れることに、むしろ堪らなく興奮する。 「アスカ、おいで」 仰向けになったユウに誘われるまま覆い被ると、腰を引き寄せられてまたキスをされる。 甘くて苦い口づけは、即効性のある媚薬のように僕の情欲を急速に駆り立てていく。熱い身体を抱きしめられて舌先で優しく唇を舐められると、背筋がまた小さく震えた。 起き上がったユウは反転しながら僕の肩をベッドに押し倒し、サイドボードからおもむろに取り出したボトルを逆さまにして、その手に中身をこぼした。 少し粘度のある透明な液体を転がすように掌で温めながら、ユウは僕の顔を見下ろしてそっと微笑む。 仰向けになった僕は見えない糸で縛りつけられているかのようにじっとしていた。 ぼんやりとしながら、高鳴る鼓動の音に耳を澄ます。視界が小刻みに揺れるのは、知らず知らず瞳が潤んでいるからだ。 きっと物欲しげな顔をしているのだろう。そう思うけれど、自制することができない。 欲しくて堪らずに疼いている部分がユウから見えるように、僕は恐る恐る脚を開いていく。 途端にそこへと纏わりつく視線を感じながら声には出さず眼差しでねだる。伸びてきた指先が後孔の周りをそっとなぞり、ぬるりと滑る感触に僕は息を吐く。 「あ、あ……ッ」 与えられるもどかしい刺激に、はしたない声が漏れた。そんな僕を煽るように、指先が襞をなぞり円を描く。 時折窪みに嵌るそれは、中に入ってくるかと思えば次の瞬間には余韻を残したまま離れていく。焦らすような動きに下肢がじりじりと痺れて、苦しさに涙が滲んできた。 「あ、ユウ……、挿れて……」 我慢できずに腰を揺らしてそう訴えれば、ユウはその言葉を待ち受けていたかのように軽く口角を上げた。 小さな圧迫感を伴いながら、長い指が少しずつ僕の中に入ってくる。中の熱を確かめるかのようにぐるりと掻き回されて、思考を蕩けさせるほどの甘い刺激に腰がピクリと跳ね上がった。 「……ん、あぁ……ッ」 奥を引っ掻くように指先が曲げられて、思わず大きな声がこぼれる。深く、浅く。内側を侵食していく感覚が、僕の官能を喚起する。 でも、まだ足りない。もっと確かな熱が欲しい。 自ら腰をくねらせて動きを促せば、やがて一番感じる場所を的確に擦り上げながら抽送が繰り返されるようになった。湧き起こる快楽は、僕を優しく犯していく。 「あっ、も、イキそ……ッ」 頭の中が次第に白んで、強張った下肢がぶるぶると震えだす。シーツを掻く手に濡れた手が重ねられて、その温かさに安堵した途端、堪えきれず達していた。 「……あ、あぁ……っ、ん、は……ッ」 咥え込んだ指を締めつけながら、中は収縮を繰り返す。体重を掛けないよう覆い被さってくる身体に、僕は両腕を回していく。 その確かな存在を確かめたくて、強くしがみつきながら押し寄せる余韻に浸った。 ぼんやりとした意識を抱えたまま少し身体を離せば、乱れた呼吸を閉じ込めるように唇を塞がれる。 このまま息の根が止まってしまえばいい。甘美な誘惑に意識が流され、死への憧憬は一瞬で泡のように消えていく。僕には快楽を享受したいという欲が強く残っているから。 短いキスを終えた唇はすぐに耳元へ滑り落ちて、耳下から首筋を降りていった。ずっと僕の中に入ったままの指が、再びゆっくりと動き始める。 爆ぜた後の身体はまだ熱を籠らせていて、そんな緩やかな動きにさえ敏感に反応してしまう。 「……あ、あ……」 首筋をきつく吸われて、チクリとした刺激に思わず声を漏らす。 顔を離したユウは僕の目の前で艶やかに微笑み、今まで唇をあてていたところに指で触れた。 何度も、何度も。確かめるように。 それで僕はようやく気づく。ユウが僕に所有印をつけたことに。 「ユウ……」 にわかには、信じられなかった。驚きでまじまじとユウを見つめてしまう。 そんな僕の瞳を覗き込みながら、ユウはまた中に挿れている指で奥を掻き混ぜていく。 そこから生まれる快楽に小さく息を漏らせば、ユウは僕の首筋を愛おしげに撫でて、そっと名前を呼んだ。 「アスカ」 さらりとした髪が頬に触れて、また唇を啄ばまれる。 今まで幾度も身体を重ねてきたけれど、ユウは僕の身体に痕のつくようなことをしたことがなかった。 それはきっと、僕がユウと契約した人のところへ行かなければならないからだ。 そして、僕が契約の相手から愛された痕跡をつけてここへ戻ってきたとき、いつもそれが消えるまでユウは次の契約を交わすことはなかった。 まっさらな状態で、僕の四日間を買ってくれた人のところへ行く。その僕が誰かに抱かれた証を付けた状態でここを出ることがあってはならない。少なくともユウはそう考えていたに違いなかった。 もう一度唇が首筋を降りて、舌先が肌をなぞっていく。そんな微弱な刺激にさえ反応して、僕は何度も息を吐いた。 目を閉じてゆっくりと抽送を繰り返す指の感覚を追いかければ、頭の中は白く官能に染まっていく。鎖骨の辺りを強く吸われて、その熱さにまた身体がわなないた。 「ん……ッ」 肌に唇が触れる度に、身体の芯が快感に震えてしまう。

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