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「ずるいよね、自分のイメージ逆手にとってこんな事して……」
体育すわりをしながら、額にかかる前髪を掻きあげ眉を寄せる。
悪いことだと認識しているから、やりたくないことから逃げている自分に対し苛立ちを覚える、だけど、それを周囲に公表する事も出来なくて真面目と言うイメージに甘んじてしまっているのが許せないという事らしい。
「いいんじゃねぇか、別に」
「えっ?」
「周りから真面目だと思われてるなんて最高じゃねぇか。俺なんて何もしてないのに事件があれば、まず疑われんのは俺なんだぜ?」
たまに気が向いて真面目に勉強してたら、”雨が降る”だの、”世界が破滅する~”だの、酷い言われようだ。
他人が勝手に付けたレッテルに左右されるのは本当に疲れる。恐らく湊も同じ気分なのだろう。
「僕たちって似てるんだね……」
言いながら空を仰ぎ見た。麗らかな日差しに照らされた湊の陶器のような滑らかな肌や、艶のある柔らかそうな黒髪に目が釘付けになる。
――触れてみたい。
唐突にそう思った。よくよく考えてみればここは屋上で、自分達以外誰もいないのだ。
触れて、形の整ったその唇を奪ってやりたい。湊の全てを自分のモノにしてしまいたい。
だが、そんな事をすればもう二度とこうやって話し掛けてはくれないかもしれない。
「…………全然、似てねぇよ。俺はお前みたいに真っ白な生き物じゃねぇし」
腹の中では毎日、湊を犯す妄想を抱いているのだ。実際は友達のままで居たいと言う思いから行動には移せていないのだけれど。
このドロドロとした感情を湊に知られて軽蔑されるのが怖い。
「僕、キミが思っている程白くは無いと思うよ?」
「嘘だ!」
思わず大きな声を上げてしまって、そんな自分に驚いて口を噤んだ。
湊は大我にとっていわば聖域のようなもの。絶対に侵すことが出来ない清らかで神聖な存在なのだ。
汚れを知らない真っ白な存在だからこそ、自分の手で無茶苦茶にしてやりたいと心の底では願ってしまっている。
相反する二つの思いが大我を苦しめているのだ。
「悪い。大きな声出して……とにかく、俺とおまえは同じじゃない」
それだけは、はっきり言える。
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